英国スタイルの老舗ビスポーク
『アスコット チャン』春の受注会へ。

(2012.03.19)

赤坂東急エクセルホテル
『アスコット チャン』の受注会がありました。

イラストレーターでアート・ディレクターの土屋孝元さんが大好きなおしゃれ、心が落ち着くお茶の稽古、大切な庭の四季のうつろい&お手入れ、話題の美術展や展覧会について、軽やかなイラストともに綴る連載『お洒落奇譚。』。コラムにも登場した香港のビスポーク・テーラー『アスコット チャン』のオーダー・キャラバンが日本にやってくる! 土屋さん、春夏用のシャツのオーダーに行く、ということで、おともさせていただきました。

場所は東京・赤坂東急エクセルホテルのとある一室。『アスコット チャン』のオーダー・キャラバンは毎年3月と9月の2回、東京のほか名古屋・観光ホテル、大阪・ヒルトンホテルと巡ります。土屋さんは25年来の『アスコット チャン』のファンで、毎回この機会を逃さず、新しいシャツのオーダーに訪れているそうです。そのこだわりは「スーツに続き、シャツの話など。」「良く眠れる季節。たかがパジャマ、されどパジャマ。」で、イラスト付きで紹介しています。

今回、土屋さんはこれからのシーズン用にシャツ、パジャマをオーダーします。


左/エルメネジルド ゼニア、ロロ ピアーナなど有名ブランドの生地を見本帳で選んでオーダー。
右/土屋さん、パジャマ用にホワイト&レッドのストライプ コットン生地をチョイス。

左/カラー(襟)とカフス(袖口)の見本がズラリ。ここの具合でキチっと見えるかどうか決まる、重要なパーツです。
右/希望すればオーダーしたシャツやスーツにイニシャルの刺繍を入れられます。
ブリティッシュ・トラッド好きにはたまらない
老舗ビスポーク・テーラー。

『アスコット チャン』はおしゃれ紳士に愛される香港の老舗ビスポーク・テーラー。特にオール・ハンドメイドのシャツの仕立てのよさ、シルエットのスマートさで知られるメーカーです。創業は1953年。英国領であった香港において、生粋のブリティッシュ・スタイルのビスポークのクラフトマンシップで高い評価を得て、香港の他にも中国、フィリピン、ロサンゼルス、ニューヨークにもお店を構えるほどに成長しました。

細身のヨーロッパ・スタイルのファッションが好みだという土屋さん、中でも英国のものは、やはり生地も仕立てもよいのでブリティッシュトラッド派だそう。かつては『ターンブル&アッサー』のオーダー・シャツも試したそうです。ジェームズ・ボンドが愛用というそのシャツは腕の太さや肩まわり、ウエストラインとどこも隙間が1~2cmもないくらいで、ピチピチ過ぎ。きつからず、ゆるからずフィットして、ネクタイをしなくてもキチっとして見える『アスコット チャン』のシャツに落ち着いたそうです。

オーダー・キャラバンが行われている部屋では、にこやかな2名のテーラーさんがおり、流暢な日本語で対応。ところ狭しとスーツ、シャツの生地見本帳が置かれています。さらに壮観はズラっと並んだシャツのカラー(襟)&カフスの見本。レギュラー、ボタンダウン、ラウンドカラーさまざまな種類とサイズで約40種。そこから好み、サイズのものを選んで注文します。

カラーとカフスはベースとなる型が20種、裏張り、縫製、組み合わせのオプションで、自分が思い描く理想のシャツを創ってもらうことができるのです。

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ビスポークなので採寸するのが当たり前と思いがちですが、サイズに変わりはない常連の土屋さんの場合、新たな採寸はなしで布地を選ぶのみ。25年間、通ううち好みのシャツの型、襟の形、カフス、ボタンの仕様が徐々に完成、もう決まっているのです。

土屋さんのシャツは「69A」という レギュラーカラーの特別仕様。数センチ襟を高く、幅も広くしたものでボタンダウン無し。カフスはフレンチ、ラウンドスリーブ、ボタンはクロスステッチでとめたホワイトシェル。そのスタイルで、今回はライトブルーのヘリンボーンのコットンをチョイス。土屋さんくらいまで好みのファッションのディテール、仕様がわかっていることは楽しいことですね。

今回オーダーしたカジュアルスタイルのシャツ、プライスは日本円で14,100円。なんと送料込みです。パジャマは上着・パンツのセットで28,000円。完成するのはオーダーから約1ヶ月、エアメールで到着します。茶色の包み紙に丁寧に包装されて届くのが毎回楽しみなのだといいます。

担当テーラーのネルソン・チンさんと、土屋さん。「ネルソンさんは僕の顔をちょっと見ただけで、太ったか痩せたかわかるみたい。そういう時は採寸しましょう、と言います。」

普通のショッピングだと、すでに完成した既成品から、好みのものを選んでいきます。なかなかピンとくるものがなかったり、往々にして困ることも。これは、好きなもの、着たいと思うものがあやふやだったり、なんとなくだったりするからではないでしょうか。

理想の形が先にありきで、自分にぴったりのサイズで作ってもらえるビスポーク、カスタム・オーダーは、逆転の発想。傷んだら、パーツを取り替えてもらうこともできるそうです。つまりは好きなものを長く着ることができるのです。

おしゃれの楽しみとは、まず自分を知り、自分の好みを知り、それを実現できる人、お店と出逢うと出会うこと。ビスポークは、お金も時間もかかるけれども、モノ、作る人、作ってもらう人の間で愛情が育つ、豊かなおしゃれ術である、
と観察しました。

アスコット チャン
MW6, Peninsula Hotel, Salisbury Road, Hong Kong 852-2366-2398