土屋孝元のお洒落奇譚。先日のスーツに続き、シャツの話など。

(2010.08.31)

シャツについても いくらかのこだわりがあり もう25年ぐらい前から注文することにしています。
それまでは、『IKE BEHAR(アイクベーハー)』のボタンダウンとか(故ケネディ大統領が好んで着ていたシャツ。)『GITMAN BROTHERS(ギットマンブラザース)』のオックスフォードとか、『Willis&Geiger(ウィルス&ガイガー)』(ヘミングウェイが着ていたシャツ)のハンティングシャツとか、『Barry Bricken(バリーブリッケン)』のチノパンに合うものを好んで選んでいました。

今では年に2回、春と秋に新調しています。そのシャツを頼むきっかけは、昔、香港に出かけた折にたしか、ペニンシュラホテルのロビーを散策していた時、(1983年頃は香港がイギリス領だったこともあり、このロビーは紳士用のお店が集まり、買い物好きにはたまりませんでした。ここのアフタヌーンティーは美味しいですね。)偶然にシャツ屋さんを見つけて 中に入り試しに作ってみようと注文したのが最初です。その後、仕事で出かけたロスアンゼルスにてOFFの時間に『ロサンゼルス・カウンティ・ミュージアム・オブ・アート』へ、サイ・トゥーンブリー、マーク・ロスコ、若冲を観に出かけた帰りにウィルシャーブルバードを歩いていて、偶然そのお店『Ascot Chang(アスコット・チャン)』を見つけて注文をしました。

©Takayoshi Tsuchiya

話はそれますが サイ・トゥーンブリー(Cy Twombly)について簡単に。最初に作家の顔写真を見かけたのはブルース・ウェーバーの写真集『A House is Not A Home』でした。その当時70~80歳ぐらいで作品を前に白いスーツを着てポーズをとる姿はなかなかのいける紳士でした。

現代美術作家で白いキャンバスに鉛筆や絵の具(赤系の色、スカーレットか、バーミリオン系の色。)にて古今東西の哲学の一文をドローイングする表現が有名です。この時カウンティミュージアムには左右幅100mにもなるようなキャンバス作品があり、鉛筆や絵筆は作家が自分で2から3mのものを制作してドローイングしているようでした。僕もこの作家の白い彫刻作品に影響を受け流木を削り胡粉でペイントし真鍮の軸を刺し台座にはアクリルのかたまりを使用したものを作ってみたりしています。マーク・ロスコや若冲はご存知のことと思いますので省略いたします。

©Takayoshi Tsuchiya

もとい。以来、ずっとそこのシャツを作っています。

最初はワイドな襟元にしたり、変化をつけたりしていましたが、
今は自分なりのカタチを決めています、襟はレギュラーカラーで標準よりも1cmから2cm大きく、と表現するよりも襟を長く8・5cm に、これは生地の柄や色により変化します。生地はシャンブレーやオックスフォードなどもあり、色について 最近ではブルーの(ブルーにも無限に色がありますが、自分の好みの色は決まってくるものです。)ストライプが多くなりました。ストライプの幅は、1mmぐらいから5mm、太いものは1cmまで、ギンガムチェックなどもよく着ます。必ず白のシャツも作りますね、シャツは白が基本ですから。白いシャツほど生地の差がでるものはありません。生地のメーカーはイギリスの『THOMAS MASON(トーマスメイソン)』のものか、『Ascot Chang』のシーアイランドコットン(海島綿)から選びます。ほとんど綿ブロードが多いです。このシーアイランドコットンの100番手から200番手ぐらいまでのものが好きで、200番手のものになると着心地もシルクのようで気にいっています。この位の生地でパジャマを仕立てると最高の寝心地ですよ。

毎年とはいかないので数年毎にお願いしています。白いパイピングの付いたブルー生地のパジャマはアイロン掛けして畳んだ姿も絵になります。

シャツに戻り、フロントの首元の釦は2つ釦、カラーの高さは 4・5cm、スーツを着たときに後ろから見て、襟元が見えるバランスです。袖口はフレンチカフスタイルで折り返しの袖口のデザインはラウンド無しでスクェアー。 必ずカフスをつけ、カフスのデザインもシンプルなものが多いので袖口はスクエアーと決めました。
 

昔は海外などに行くたびに、様々なデザイン、変わったものなど試してみたのですが (もしも、変わったものが選びたいという方でしたら、NYの『Bergdorf Goodman(バーグドーフ グッドマン)』のメンズ館にはかなりの種類があり、価格も手頃でしたが、今はどうでしょうか。)だんだんと好きなカタチが決まり、今では多くても5タイプぐらいを着回しています。釦は白蝶貝で4孔開き釦、糸はクロス掛け。
普通に見えるシャツがイイですね。