村上由のフーディーズ・ナウ - 3 –  『シーバスリーガル 25年』復刻版が日本発売。

(2010.12.10)

『シーバスリーガル』。200年以上続くスコッチウイスキーの名門シーバスブラザーズ社の手がける伝統のブランドだ。同ブランドの中で最も長い熟成を誇るのが、『シーバスリーガル 25年』。1909年に『シーバスリーガル』の名前を冠した最初のウイスキーとして登場したが、1920年、第一次世界大戦に伴う禁酒法の試行により、アメリカ市場から姿を消すことになった。残された数少ない品はコレクターズアイテムとして取引されたという。2007年に再発売されたが、日本では免税市場のみの展開だった。その『シーバスリーガル 25年』がとうとう、日本で一般販売される事になった。

発売に先立ち、スコットランドのシーバスブラザーズ社から、マスターブレンダーのコリン・スコット氏が来日。彼こそが、2007年に『シーバスリーガル』25年復刻版をブレンドした人物だ。発売前に、日本で製品を取り扱うペルノ・リカール・ジャパンの主催するテイスティングディナー(会場:ゴードン・ラムゼイ at コンラッド東京)に参加し、スコット氏の話と共に、いち早く幻の『シーバスリーガル 25年』を味わう機会をいただいた。

そもそも、マスターブレンダーとはどんな役割を担うのか? それにはまず、『シーバスリーガル』がブレンデッドウイスキーであるという基礎から理解しなければならない。スコッチウイスキーは、原料と蒸留方法の違いでモルトウイスキーとグレインウイスキーに分かれていて、ブレンデッドウイスキーはこの2つのタイプのウイスキーからそれぞれ数種〜数十種のウイスキーを混ぜて作られる。熟成を経ながら刻々と状態を変えるウイスキー達を理解するマスターブレンダーこそ、求める味わいや香りを備えたブレンデッドウイスキーを作ることが出来るのだ。
シーバス・リーガル25年の復刻版をブレンドするにあたり、どんな思いだったのだろう。スコット氏に話を聞いた。

ファーストドリンクを飲みながら、参加者の質問を受けるスコット氏。

「オリジナルが発売されたのはもう100年以上も前。当時のマスターブレンダー、チャールズ・ハワードによるブレンドでした。彼は、シーバス・ブラザーズから命じられた「洗練されたテイストをもつ富裕層を満足させる、特別なウイスキー」をブレンドする為に、地下のウイスキーセラーに駆け下り、彼自身の持つ全ての知識とセンスを尽くし、様々なブレンドを試して一つのフォーミュラ(レシピ)を完成させました。それがオリジナルの『シーバスリーガル 25年』となったのです。

世界初のラグジュアリーウイスキーとして、その当時最も華やいでいたNYの社交界で大絶賛されたそうです。ウイスキーのブレンドで最も大切なのは、consistency(一貫性)。流行や、ブレンダーの好みによって変わったりしてはいけないのです。常に、『『シーバスリーガル』』でありつづけるウイスキーをブレンドすること、『25年』の品質と個性を再現し、そして保ち続けること。それがマスターブレンダーの役目だと思っています」

ディナーの最初、可愛らしいアミューズに合わせてのファーストドリンクは、シーバス・リーガル 12年をクラブソーダで1:2.5の比率で割ったもの。12年の持つハーブや蜂蜜、果物の爽やかで甘い香りや、バニラのテイストがソーダで華やかに広がり、洗練された食前酒となっている。その後の季節のジビエ、カボチャのヴルーテと帆立貝のロティには、ストレート、水割り、ロックなど好みに応じて。スコット氏のオーダーにならい、常温の水と1:1で割ってもらった。冷たく飲むときよりも香りが広がり、舌触りもずっとまろやかだ。

メインの鹿鞍下肉のローストにはシーバス・リーガル18年が提供され、12年とは異なるテイストと、料理とのペアリングを楽しむ。ドライフルーツの複雑な甘い香り、それでいてスパイシー。味わいは12年よりもやわらかくエレガントで、鹿肉のクセを包み込む深みがある。

食前・食後のイメージが強かったウイスキーだが、食中酒としてもこれだけバリエーション豊かに楽しめるとは驚き。

「温度や加水の有無など、いろいろと専門的なことが言われているけれど、私自身はそれぞれの好みで構わないと思っています。日本ではハイボールがよく飲まれているそうだし、中国や台湾などでは甘いグリーンティーと割ったりもするらしい。どれも間違った飲み方ではありません。ウイスキーそのものの美味しさを感じてもらう入り口として、好きな様に飲んでもらうのが一番」と、マスターブレンダーのスコット氏の言葉。

ウイスキーの香りには、シトラス系のフルーツのアロマが自然に含まれているので、熟成年によって異なるシトラスを感じることができる。シトラスの風味を味わうには、あえてレモンやライムを足さないで飲む方が『シーバスリーガル』ならではの味を楽しめる。

シーバスリーガル25年を手に、説明するコリン・スコット氏。
ファーストドリンク:シーバス・リーガル12年をクラブソーダで1:2.5の比率で割ったもの。

そしていよいよ、デザートと共に『シーバスリーガル 25年』の登場! あらためてスコット氏と乾杯し、まずはカラーの拝見と、香りから。赤みがかった豊かなゴールドの液体、そして鼻孔にまとわりつくほどの甘いオレンジや桃の香り、加えてナッツの香ばしさが素晴らしい。少しだけ口に含むと、とろっとした質感で、チョコレートのような甘さが広がり、長い長いフィニッシュまでまさに「ラグジュアリー」な味わいを十分に堪能した。

メインの鹿鞍下肉のロースト シーバス・リーガル18年が提供される。
デザートと共に、シーバス・リーガル25年をストレートで。

このところのウイスキーブームで、初めてウイスキーを体験した人、今まで以上に色々なウイスキーを飲む機会が増えた人も多いだろう。もしこの『シーバスリーガル』25年に出会うことがあれば、必ず飲んでみて欲しい。そして、コリン・スコット氏の卓越した技術とセンスが支える、シーバス・ブラザーズの伝統を味わってもらいたい。

 

シーバスリーガル テイスティングディナーのメニュー

『シーバスリーガル 12年』withクラブソーダ(1:2.5)
Amuse Boucheシェフからの可愛らしい一皿 (ゴルゴンゾーラ シュー、クリームチーズwithビーツパウダー、グリッシーニ)
甘エビとメロンのピューレ

『シーバスリーガル 12年』 ロック、水割りなどお好みで —–
季節のジビエ モザイク仕立て 栗とポルチーニと共に マデラ酒と黒胡椒のゼリーで
カボチャのヴルーテ 帆立貝のロティ トリュフの香るトルテリーニ

『シーバスリーガル 18年』 ロックまたは水割り
鹿鞍下肉のロースト ガルニチュール森の中仕立て スパイス香る赤キャベツのブレゼ チョコレートと木苺のソースで

『シーバスリーガル 25年』 ストレート(&チェイサー)
デザート前のお楽しみ
林檎のパルフェ 蜂蜜とビターチョコレートと共に シャンパンのフォーム ヨーグルトアイスクリーム

 

 

問い合わせ ペルノ・リカール・ジャパン 
Tel. 03-5802-2671
http://www.pernod-ricard-japan.com