デキる女のデジタル仕事術。- 4 - 子育てと両立しながら電車の中でも原稿を執筆する充実の日々。
ライター 栃尾江美さん

(2010.11.29)


プロフィール
ライター
栃尾江美

東京生まれ、中学3年生より群馬で育つ。1998年外資系コンピューターメーカーへの入社を機に上京。ITコンサルタントとして、OracleやSAP R/3を用いた基幹システムの構築に携わる。2004年に退社し、3ヵ月ほどハワイにて語学留学をかねて趣味の「フラ」(ハワイアンダンス)を学ぶ。帰国後、ライターへの転身を決意し、2005年に編集プロダクション・アバンギャルドへ入社する。その後、男性ファッション誌、女性誌、デジタル誌、ビジネス誌、情報誌など多くの雑誌にて執筆。同時に、Webの記事や、企業のWebサイトも担当する。大手通信会社、大手半導体会社、官公庁、外資系化粧品会社などが代表的。現在の仕事は、モバイル機器レビューの連載ほか、フリーペーパーや、パソコン誌、各種ムックなど。プライベートでは2006年に結婚し、2009年10月に息子が生まれる。現在はフラも続けつつ、育児と仕事、家庭のバランス調整に試行錯誤中。
ブログ「WRITE・WRITER・WRITEST(ライト・ライター・ライテスト)」

 
コンピューターメーカーから文筆業へ。
さらに、結婚、出産、子育てと、
がらりと変わる環境でも無理せず適応する栃尾さん。
変化に負けない女性らしい強さを見せてくれた。

コンピューターメーカーで6年半勤めた後、ライターへ転身し、現在は育児と両立している栃尾さん。お子さんは昨年10月に生まれたばかりだとか。

「妊娠してすぐに、Twitterで知り合った方にタロット占いをしてもらったんです。『何でも自分でやろうとしないで、人の協力を得ましょう』という内容だった。まだ妊娠したことを打ち明けていなかったので『仕事のことですね』と言われたのですが、あとから子育てのことかなと気づいたんです。
協力する人としてもらう人、お互いが満足できる形でバランスを取るのは大変ですよね。本当にありがたいけれど、自分でやってしまおうと思うことがある。でも、結局自分の首を絞めると思うから、感謝の気持ちを忘れないようにしつつも、かなりの部分で助けてもらっています」

もっともお世話になっているのは、実の母と、義理の母だとか。

「平日は日を分けて息子の面倒を見てもらっているんです。食事の準備もしてくれている。二人の協力がなかったら、私は仕事をほとんど続けられないでしょう。また、休みの日や平日の夜に、夫に助けを借りることもあります。上司の奥様も、万が一の時は見てくれると言ってくれています。恵まれすぎているほど、多くの人に助けてもらっているんです」

● 自分だけではなく、家族の予定もOutlookへ。

たくさんの人の協力を得て仕事をしているからこそ、遊びの時間はほとんどない。電車に乗っている時間や、歩いている時にも気を抜けないほどだ。

「とにかくデスクワークできる時間が少ないんです。PCの前にいる間は、そこでしかできないことに時間を使いたい。メールの文面を考えたり、ニュースをチェックしたり、アイデアを練るといったことは、移動中など細切れの時間で作業するようにしています」

そこで活躍するのがiPhone。原稿の下書きを移動中に書くこともあるとか。

「基本的にはメールのチェックや返信が多いですが、最近は原稿も書きます。時間が空けば、カフェなどで持ち運びできるキーボードを使って書くことも。

最近は、クラウドと呼ばれる、データをPC上ではなく外部のサーバーに保存するサービスをよく使っています。そうすれば、原稿を途中までiPhoneで書いていても、PCの前に座ってブラウザーを開くと同じデータをすぐに見ることができる。いつどこで時間ができるかわからないので、重宝していますね。新しいOffice for Macはクラウドに対応して、PCで作成したファイルをアップしておけばiPhoneでも見られるので、ぜひ使ってみたいです」

スケジュール管理にはOutlook(メールとスケジュール、連絡先の統合ソフト)を使っている。

「Outlookは、もちろんメールに使っていますが、スケジュール管理にもとても便利。1週間の予定を時間割のように見ることができるから、空いている時間が一目瞭然です。仕事の予定を入れるのは当然ですが、家族の予定も入れています。たとえば、来てくれる予定だった日に実母の都合が付かなくなったら、終日の予定で『母休み』と書いておく。打ち合わせや取材の予定を入れないようにして、その日はデスクワークもほとんどできないと割り切ります。

常に見るから、別の予定をブッキングしてしまうような間違いが防げるんです。どうしても予定が入ってしまったら、義母に打診したり、夫に有休を取ってもらったり……。子どもがようやく1歳になったので、そろそろ託児所も考えたいとは思っています」

そんな忙しい毎日も、お子さんとのふれあいが癒される時間なのだとか。

「子どもを預かってもらっている間は、とにかく時間を濃密に使うようにしていますが、子どもと遊んでいるときには、仕事はできないと割り切ってリラックスしていることが多い。パソコンを開いただけでも触りたくて大騒ぎしてしまうので、面倒を見ながら仕事をするのはなかなか難しいですね」

● アイデアを書き出すのに使い慣れたツールが一番。

職業柄、仕事ではWordを使うことが多い。レイアウトをしても相手先にそのまま送れるのが重宝しているとか。

「雑誌などで見かけるような、先頭の1文字を大きくした文字組みができる『ドロップキャップ』を使って、編集部にそのまま送って見てもらいます。文字数がきちんとチェックできるのは、雑誌の原稿を書く際にはありがたいです。Wordはビジネスシーンでのスタンダードなので、取材した方に校正をお願いするときにも、Word文書のままで送れます」

原稿だけではなく、構成を練るにもWordを利用する。

「ものごとを階層にしながら書いていける『アウトライン』機能が好きでよく使っています。構成を考えるのにぴったりなんです」

24時間、活動しているように見える栃尾さん。仕事にも乗っている様子が伺える。ところが、既成概念を取り払ってアイデアを出すのは苦手だという。

「何か思いついても、自分で制限をかけてその場で否定してしまうことが多いんです。後から思い出そうとしてももう思い出せない。私の場合、思いついた時点で制限しないことが、発想の鍵でしょうね。アイデアを出す脳と、実現の可能性を考える脳は、別の場所なのだと聞いたことがあります。だから同時に使うのが難しいのでしょう。

アイデアを思いついた時点で善し悪しを判断しないために、手当たり次第に書いてみます。紙にボールペンで書いたり、Wordで箇条書きにしたり、PowerPointで図にしたり。書いておかないと、頭の中が固まった考えで埋め尽くされてしまうように感じるんです。『いいかも』と思った1つのアイデアでいっぱいになって、ほかの案が浮かばない。私のような仕事では、案を複数出さなくてはならないケースがとても多いので、ひとつの考えに縛られるのは危険なのです。

思いついてから書き留めるまで、できるだけほかの脳を使わないほうがいいと思います。だから、使い慣れていて、簡単に視覚化できるツールが必要。そこでやはり、WordやPowerPointが味方になってくれるんですね」

● できるだけペーパーレスに近づきたい。

ITに関する記事も多く執筆していることから、今でも十分に使いこなしているはずだが、今後はどのように活用していくのだろう。

「最近、簡単に破ってスキャナーに取り込み、電子化できるようにメモをレポート用紙のタイプに変えたんです。でも、今でもノートにボールペンでメモしているんですよね…。アナログにこだわっているわけではないのですが、これだというデジタルメモツールが見つからなくて。

資料も、結局印刷してしまうことが多いです。まとめてファイリングしておけば、必要になったときに一番素早く取り出せますから。

本当は、すべてを電子化したいと思っています。性能の高いパソコンを使って、もっとクラウドを活用したり、iPadを駆使するなど、工夫したい。『ペーパーレス』という言葉は新しくもないですが、なるべく近づきたいと思っています」

取材の間にも、お子さんをiPhoneでなだめる姿を見せた栃尾さん。アプリや子ども向け音楽を入れて、子育てにもITを活用している姿が印象的だった。

 

 

駅のホームも格好の仕事場。電車を待つ間もメールチェックや原稿書きなど、できる作業はたくさんあるとか。まさに現代のデジタルスキルの持ち主。