道田宣和のさすてーなモビリティ vol. 19毎度お馴染み輸入車顔見世興行 長唄清元常磐津、梨園の名跡総復習え。

(2015.03.20)
トーキョーモビリティ19。3月7日に全線開通した、出来立てホヤホヤ真っ新な首都高中央環状線(C2)“山手トンネル”。湾岸線(B)と別かれ、3号渋谷線とマージするまでの大井ジャンクション(JC)→大橋JC間(外回り)は入ってすぐ、箱根ターンパイクのようなダウンヒルが続き、奈落の底に落ちて行くかのようだ。
トーキョーモビリティ19。3月7日に全線開通した、出来立てホヤホヤ真っ新な首都高中央環状線(C2)“山手トンネル”。湾岸線(B)と別かれ、3号渋谷線とマージするまでの大井ジャンクション(JC)→大橋JC間(外回り)は入ってすぐ、箱根ターンパイクのようなダウンヒルが続き、奈落の底に落ちて行くかのようだ。
千両役者になります!

吉例JAIAこと日本自動車輸入組合大磯試乗会ルポの続き。前回は吉例大磯試乗会初舞台となったテスラがスーパー歌舞伎さながら六方を踏んでいきなり花道を飾ったが、当コラムを目にした同社広報氏曰く、「千両役者目指して頑張ります」と粋な返しで見得を切った。幕間を挟んでの今回は外連味たっぷりのスーパーカーあり、上等なクーペあり、電気仕掛けあり、軽油で走る小型車ありと多士済々。各々45分の一幕見にて御免仕り候。

JAIA(日本自動車輸入組合)設立50周年を記念した特別展示。良くも悪くも“ガイシャ”がガイシャであった頃の文字どおり千両役者。1967年キャデラック・ドヴィル(右)と1972年メルセデス・ベンツ600。いずれも全長5.5~5.6m+に及ぶ超大型・超高級車で、中でも後者は世界の王侯貴族やローマ法王に愛用された。かつて取材でオーナーから“600”を借り受けて我が家に持ち帰ったら平場のマンション駐車場で鼻先1/3がはみ出してしまい、身の程を思い知らされた。
JAIA(日本自動車輸入組合)設立50周年を記念した特別展示。良くも悪くも“ガイシャ”がガイシャであった頃の文字どおり千両役者。1967年キャデラック・ドヴィル(右)と1972年メルセデス・ベンツ600。いずれも全長5.5~5.6m+に及ぶ超大型・超高級車で、中でも後者は世界の王侯貴族やローマ法王に愛用された。かつて取材でオーナーから“600”を借り受けて我が家に持ち帰ったら平場のマンション駐車場で鼻先1/3がはみ出してしまい、身の程を思い知らされた。
 
フォルクスワーゲンe-up!/366.9万円

さすがはアウトバーン生まれと大向こうを唸らせた。VW一門の末弟は日頃の修練の賜か、走る・曲がる・止まるの所作が気持ちいいほどぴたりと決まり、そもそもup!なるもの100%電動のこのEVのために作られたかのようだ。変速機を持たないから当たり前と言えば当たり前だが、ガソリン版唯一の欠点だったギアチェンジのぎこちなさとも無縁で、高速になればなるほど素性の良さが際立って来る。ただし、あまり調子に乗って飛ばすのも考えもの。西湘バイパスが空いていたのをいいことに結構なペースで愉しんだらみるみるバッテリー残量が減り、本来JC08モードで185km保つはずがものの40km弱でほぼ半減した。

外観に劣らずシンプルなe-up!のメーター。左からパワーメーター、速度計、バッテリー残量計の順。
外観に劣らずシンプルなe-up!のメーター。左からパワーメーター、速度計、バッテリー残量計の順。
食事中」のe-up!。リストプライス自体は高めだが、言うまでもなくEVなるが故の各種補助金や減免税の恩典が受けられ、「食費」そのものも安い。
食事中」のe-up!。リストプライス自体は高めだが、言うまでもなくEVなるが故の各種補助金や減免税の恩典が受けられ、「食費」そのものも安い。
 
メルセデス・ベンツCLS 550(クーペ)/1224万円

輸入車界きっての名門、スリーポインテッドスターの絶大なる威光と全長約5mの堂々たる体躯。おまけに安全装備は盤石だ。となれば後は煮ようと焼こうとお好み次第。格式張ったセダンでなければなおさらだ。腰から上のグリーンハウスを詰めに詰めて小顔に仕立てた豪華4ドアクーペはそんな余裕あらばこそ。たっぷりしたサイズのレザーシートとダークなウッドトリムに囲まれたインテリアは昼なお暗い南欧風隠れ家の趣きあり。低い軒先とそこにぶら下がる各種デバイスやらミラーやらで視界の半分は奪われかねない勢いだが、その密やかさこそが真骨頂に違いない。4.7ℓV8ツインターボエンジンは鷹揚だが、むろん腕力もある。

どうせなら、このくらいシークレットな方がいい? 予想を上回る売れ行きなのは事実だ。
どうせなら、このくらいシークレットな方がいい? 予想を上回る売れ行きなのは事実だ。
ブランドマークも誇らしげな豪華高級パーソナルクーペのCLS。勧進帳である。これと見た目がそっくりな弟分のCLAはそのリッチなイメージをちゃっかり我が物としている。
ブランドマークも誇らしげな豪華高級パーソナルクーペのCLS。勧進帳である。これと見た目がそっくりな弟分のCLAはそのリッチなイメージをちゃっかり我が物としている。
 
MINIクロスオーバー・クーパーSD/387万円

猫も杓子もプレミアム流行りだが、新生MINIは14年前に初めて“プレミアムコンパクト”を名乗った張本人。その小さな高級車が今や豊富な演目のひとつにディーゼルを加えた事実は注目に値するだろう。MINIとは言え一族の長兄に当たるクロスオーバーは車重1420kgに及ぶミドル級だが、2ℓ4気筒のディーゼルパワーは期待に応えて持ち前の“ゴーカートフィーリング”を披露するのに充分で、ガソリン版と遜色ない足取りで4500rpmまで回ってみせる。ことさら強烈な何かがあるわけではないが、上質な乗り味を安いランニングコストで、しかも長期に亘って愉しむには恰好の1台かもしれない。

それはMINI独得の、ヘッドランプ用切り欠きのあるボンネットを開けても同じこと。最近のクルマはほとんどエンジンがカバーで覆われて本体が見えないから。
それはMINI独得の、ヘッドランプ用切り欠きのあるボンネットを開けても同じこと。最近のクルマはほとんどエンジンがカバーで覆われて本体が見えないから。
クロスオーバーのディーゼル。と言っても外観からは分からないし、静かだから音でも分かるまい。
クロスオーバーのディーゼル。と言っても外観からは分からないし、静かだから音でも分かるまい。
 
アストンマーティンV12ヴァンテージS/2305万円

名声に胡座をかいているだけでは先が見えている。戦前戦後を通じてブリティッシュスポーツの頂点を極めたアストンが今日あるのはひとえにup and comingなライバルたちの出現とそれ故の自己変革にあったとボクは思う。眠りから覚めた獅子は眼光鋭く咆哮する。中でも性能回帰を象徴するこのモデルは伝統の隈取り風マスクと後輪駆動を継承しつつギアボックスを後置する新機軸を採用、スーパーカーで一般的なミドシップに匹敵する接地性と俊敏性を獲得した。これに同社最強の6ℓエンジンを組み合わせ、今にも飛び立ちそうな0-100km/h加速3.7秒、最高速度330km/hの圧倒的なパフォーマンスを実現した。実際、ウェットコンディションのこの日は迂闊にスロットルを開けようものなら忽ち快音とともに回転計の針が7000rpmまで駆け上がり、直線でもリアがズリズリと滑り始めた。底知れぬ実力を垣間見た思いである。

イギリス生まれを物語るkm/hとmph併記の速度計(左から二つ目)。その数字、330/205(!)に注目。タコメーター(三つ目)は往年のレーシングカーの文法に従って反時計回り。レッドゾーンは書いてないが、この大排気量にして7000rpmまでビュンビュンと回るのは驚異そのものだ。
イギリス生まれを物語るkm/hとmph併記の速度計(左から二つ目)。その数字、330/205(!)に注目。タコメーター(三つ目)は往年のレーシングカーの文法に従って反時計回り。レッドゾーンは書いてないが、この大排気量にして7000rpmまでビュンビュンと回るのは驚異そのものだ。
荒事を演じる立役、アストンV12ヴァンテージS。トレードマークのグリルは時として文字どおりの隈取りが施される。
荒事を演じる立役、アストンV12ヴァンテージS。トレードマークのグリルは時として文字どおりの隈取りが施される。
 
シトロエン・グランドC4ピカソ・セダクション/353.9万円

役回りで譬えるならフランス車はさしずめ女形。たとえチープな大衆車であってもしなやかな身のこなしが特徴で、路面の不整を柳に風と受け流すその仕草は「猫足」と称えられて久しい。畝りの連続する丘陵地帯の田舎道を時には定員乗車のまま強行突破するような荒技でサスペンションが鍛え上げられた結果だが、それは定員7名のこのモノスペースワゴンでも変わりなく、3代目に切り替わった新型はますますその感を強くした。忙しげな振動を宥めてゆったりとした長周期の揺動に変えるのだ。前輪駆動らしく強めのキャスターアクション(ステアリングがひとりでに戻ろうとする力)で矢のように直進する“スタビリテ”も健在。非力なエンジンで絶望的な加速しか示さなかったかつてのフランス車とは違い、最新スペックの1.6ℓターボが必要にして充分な機動力を発揮するのも嬉しい。

ピカソは2代目登場時から極限まで上方拡大されたウインドスクリーン(フロントガラス)がウリ。まるで禿げ上がった額のようだ。このクルマにはガラスサンルーフまで備わり、高めの着座位置と相俟ってファミリーカーに相応しい開放感に富む。
ピカソは2代目登場時から極限まで上方拡大されたウインドスクリーン(フロントガラス)がウリ。まるで禿げ上がった額のようだ。このクルマにはガラスサンルーフまで備わり、高めの着座位置と相俟ってファミリーカーに相応しい開放感に富む。