デキる女のデジタル仕事術。 – 1 - 無類の“ガジェット好き”。Twitterが新たな人との縁を繋いでくれた。
Age[アージュ]編集長 池田美樹さん

(2010.11.29)

プロフィール
Age[アージュ]編集長
池田美樹

熊本市生まれ。熊本大学文学部仏語仏文科在学中から地元の雑誌『タウン情報クマモト』で編集の仕事を開始。3年後上京。アルバイト生活の後、白夜書房に入社。青少年向けグラビア&写真投稿誌の編集に携わる。この頃個人的にMacを購入し、デジタルの楽しさに目覚める。3年後、マガジンハウスに中途入社。以降『Olive』でファッションとカルチャー、『Hanako』でグルメと東京の最新情報、『クロワッサン』で上質な暮らし、『an・an』で恋愛や芸能を中心としたライフスタイルをテーマに代表的女性誌の編集を経て2009年、素敵に働く女性との情報共有を目指したWEB+雑誌『Age[アージュ]』を立ち上げる。今後はデジタルを駆使したもっと立体的な活動にしていきたいと計画中。趣味は14年間続けている俳句で、1999年から自作を発表するWEBを運営。この夏、自作句をショートムービーとして表現する「俳句ムービー」活動を開始、YouTubeで発表中。
ブログ「about an Age」
Twitter ID @IKEDA_MIKI

 
たった1人のプロジェクトでビジネスモデルを立案――
自分をさらけ出すことで得た人脈や情報をもとに
異業界に飛び込み、走り続けている池田さん。
まっすぐな瞳の奥に、あふれる好奇心が透けて見えるようだ。

ダイアン・フォンファステンバーグの最新のラップドレスで登場した池田さんは、ファッショナブルでありながら知る人ぞ知るガジェット好き。最新のiPhone 4ももちろん持っており、スワロフスキーのヒョウ柄ケースを付けている。

「この1年は、むき出しの自分をさらけ出してここまで来ることができました」

1年とは、『Age[アージュ]』を立ち上げた頃からの話。『an・an』編集部にいた頃から企画を温め、アラフォー世代の働く女性が読む雑誌を立ち上げた。現在は、Web戦略室と協力して、Webのタイアップを企画したり、新規のビジネスモデルを立案している。

「今までは、『Hanako』や『an・an』の傘の下で、編集部員とはこうあるべき、という振る舞いや言動をすごく気にしていました。ところが、すべて1人でビジネス提案をしなくてはならなくなった。Webと連携した企画が多いため、デジタルとの連動がキーになります。IT業界のことをもっと知る必要があるのに、IT業界の知り合いなんて誰もいませんでした。
人脈って作ろうと思うと作れない。まず自分が相手に何か提供できないと始まらないんです。経験上、『相手の持っているものがほしい』と思ってうまく人脈につながった試しはないですね。ところが、IT業界の方を相手に、私が与えられるものが見あたらなかった。だから、自分をさらけ出して、ぶつかっていくしかなかったんです。それまでは『格好悪い』と思ってできなかったし、必要もなかったのでしょうね」

一見華奢な体に、大きなパワーが詰まっている。あふれんばかりのエネルギーと、自分をさらけ出す勇気は並大抵ではない。

「IT業界の人は、若くて元気があって、フラット。上下関係や年齢をあまり気にしませんね。20年間、雑誌業界に身を置いて、情報は人からしか入ってこないと感じていましたが、ITの業界も同じだと思います。人づてに様々な人を紹介していただいて、徐々に広がっていきました。今もビジネスモデルは思案中ですが、人と出会って、刺激やヒントをいただくことで、新しい企画がいくつも生まれています」

Twitterとガジェット好きが功を奏した。

「デジタル系の仕事をする上で、情報を得るきっかけを作ってくれたのがTwitter。何もわからない状態から、本名も顔も肩書きも公開して素の自分をさらけ出したら、たくさんの方がフォローしてくれた。iPadが日本で発売される前に『手に入ったから見に来ませんか?』と誘ってもらったこともありました」

フォロワーは先日6000を超えたところだ。

「併せて、『ガジェット好き』の資質も身を助けてくれました。15年以上前に発売された『LC575』というMacintoshを使っていたことや、iPad、iPhoneをいち早く手に入れたことを話すと、同じような人が身を乗り出してくれます。『iPhoneだけ使ってムービーを作りたい』と言うと、アドバイスをくれる人もいました。
振り返ると、両親の影響で中1の時にアマチュア無線の免許を取ったのが最初のきっかけでしょうね。テクノロジーで自分が進化していく感覚が好きなんです」

自宅で使っているMacBook Proも、あらゆる場所へ持ち歩く。新しい機能を知ったり、人に教えてもらうと「よし使うぞ」と意気込んでしまうとか。

「昔からMacが好きで、会社から支給されたのもMacでした。ただ、ビジネス上、Macを持っていない方とのファイルのやりとりで、互換性に困ることもあって。Macを使い続けたいので、自費でOffice for Macを購入したんです。それからは困ることはなくなりましたね。
 原稿や企画書を書くのが主な仕事なので、利用するのはもっぱらWord。初めて使ったときには、日本語や英語の間違いを自動でチェックしてくれるのに驚きました。タイプミスがすぐに見つかるのでありがたい。また、変更履歴が残る点も、様々な人とやりとりをしながら原稿を練り直す際に重宝しています」

プレゼン資料をiPadに入れて持ち歩く。

「近頃は、プレゼンをする機会が増えてきたので、“デキる女(笑)”を目指してPowerPointを強化中なんです。初めて使うときには、テンプレートがガイドラインになってくれてとても助かりました。真っ白なページがあるだけだったら、使い慣れたWordだけでプレゼン資料を作ってしまったかも。PowerPointでは、効果やアニメーションをつけたり、自作のムービーリポートを挿入したりできるのが快感ですね」

まだ使いこなしているとは言えない、と謙遜するが、作成したPowerPointは、雑誌『Age』などとともにPDFに変換し、iPadに入れて持ち歩いている。

「クライアント先でデモをするときなどに、iPadは最適ですね。紙のページをめくるような感覚で見せられますから、注目してもらえます。
仕事以外でも、iPadは大活躍しています。英語や仏語の本を読んだりメールを書いたりすることもあるので英和・和英辞書のほかに、仏和・和仏時点のアプリも入れて活用しています」

ほかにも、iPhoneだけで趣味の俳句をテーマにしたムービーを作成したり、Ustream配信をするなど、ITに詳しい人でもなかなか手を出していない分野にもチャレンジしている。

アイデアを出すために、いったん離れてみる。

アイデアの宝庫のような池田さん。会話をしていてもポンポンと新しいことを思いつき、キラキラとした表情で話す。

「アイデアを練るときには、事前に情報収集をします。必要なものから、一見関連のなさそうなものまで。頭の中が飽和状態になるまで集めます。常にアンテナを張っている状態なので情報が入ってきやくなっているのか、自然に目に飛び込んできます。
いよいよアイデアを出すときには、静かな環境でじっと自分の心の声に耳を傾けます。ソファの上に小さく丸まったりして深く集中することも。だいたいそのまま寝ちゃいますが。でもそれが大事なんです。
考え抜いた後に、一度突き放してみると、不思議とうまくまとまっていることが多い。脳の深いところで勝手に考えてくれているのでしょうね。ほかにも、まったく違う分野のものを見聞きしているときなどにひらめくこともあります。
考えがまとまったらMacを立ち上げて、一気に書いてしまうんです。その時使うのはWord。今ではすっかり手になじんているので」

頭の中で考えをまとめ、具体的な形にまでしてしまう。最後に、文字として文章に書き出す。典型的な文字人間なのだろう。

新分野へのチャレンジを続ける池田さんは、今、大きく羽ばたいている。行動から生まれたアイデアと可能性を胸に、驚くようなビジネスを立ち上げるのかもしれない。

 

 

東京都立多摩図書館で、雑誌のおもしろさについて講演。この時初めてPowerPointでスライドを作成。講演やセミナーもリアルな発信のひとつと位置づけ、積極的に行っている。