土屋孝元のお洒落奇譚。納涼茶会報告。
お茶の楽しみとは……。

(2011.09.26)

秋をテーマにお茶会。

暑さ寒さも彼岸まで、とは言いますが、今年の気候は大陸的なというか特に激しいように感じます。

季節は秋、お茶の話を少し丁寧にお話いたします。

先月末、お茶の稽古をさせていただいている師匠の銀座のギャラリー、茶室にて納涼茶会があり参加してきました。基本は裏千家の薄茶手前です。

この日は秋をテーマに秋草図の軸装、鈴虫や松虫まで描かれていて秋らしい風情です。作者はすみません、失念しました。

もう一枚、こちらに圧倒されたのです。
井上有一作、「月」の書、井上有一を知らない人が見たら現代絵画かと思う様な書です、「月」とも読めないかもしれません。軸装は師匠の見たてで綺羅(綺羅:キラとは雲母)が加工された、もみ紙の紙表装に、本紙周りには裂(たぶん、古い更紗?2〜300年前?)で囲み、作品が大きく見え、現代建築にも和室にも似合いそうです。

料理の前に酢橘の香りを付けたお水を頂きながら喉を潤し、一息ついてから席順を決められて席に着きます。正客、次客、三客、お詰(末客)と、微妙に茶室での作法が違います。正客と末客はやる事が多いのです。

先ずは、黒唐津にのった先付から。

それではお料理に。先ずは、黒唐津にのった先付から豆腐の塩漬け、酢ごぼう、枝豆と海老のゼリー寄せ、生麩と雲丹の和えも の、お茶を美味しくいただく為のお料理ですから、気をてらったものではなく普段の和食です。この先付の器はたぶん?西岡良弘さんの黒唐津。3:1の横長のフォルムも和皿としては珍しい形ですちょっとしたおつまみや薬味を盛り付けるのには重宝するでしょう。

続いてお椀、季節の冬瓜をすり流して腕仕立て、優しい冬瓜の食感が美味しい一腕です。先付からお酒も出て、冷酒、純米大吟醸、銘柄は忘れました、岩手のお酒です。徳利は瓢箪形の京焼きで尾形周平さん作?かな。


茶碗は李朝蕎麦茶碗、
まさに茶碗の完成形。

冷酒を注ぐ時に、独特の音が出てなんともいえません。人により音は微妙に違うのでしょうが、僕には この様に聞こえます。舌を上顎に付け叩いた時の音、ko-ko-ko-ko、koとkuの中間ですか。

お椀も終わり、最後はご飯です。今日は山形の「ダシ」オクラ、大葉、ミョウガ、山芋、などを混ぜ合わせご飯にのっています。暑い時や食が進まない時など簡単に食べられ、身体にも良いでしょうね。

しばし休憩してお茶室へ、正客より順に躙(にじ)りながら茶室へ入り、先ずは軸を拝見。茶扇子にて結界を作り一礼、床には雪舟作、「七賢人図」。(師匠より、雪舟の作品は、現存する本物が20点くらいしかなく、伝雪舟はあるとの事)あの雪舟等揚です。美術館でもガラス越しにしか見れない作品が目の前に。

一礼なしで、釜、水差しを拝見、(釜を見る時に灰形も拝見)見終わったら自分の席に着きます。水差しは朝鮮唐津、西岡良弘さん作か? 釉薬の流れが素晴らしい、青い窯変が目にも美しい水差しです。

招かれた客全員が拝見を終わる頃、少し間を置き亭主が襖を開け、菓子盆を正客の前に出します。水屋へ戻り、茶碗と棗を持ち再び茶室へ、水差し前に茶碗と棗を 「おき合わせ」てから、水屋へ戻り、建水柄杓を持ち茶室へ戻ります。

茶碗は李朝蕎麦茶碗、前にも見せて頂いた茶碗です。600年ぐらいを経て、まさに新蕎麦の色をしています。形、フィルムも、見飽きない形でまさに茶碗の完成形。ルーシー・リーの茶碗にも似ているか、本家はまさにこちらでしょうね。棗(なつめ)は不思議な文様です、アラベスクの様な現代的な文様の棗です。

問答がお茶の醍醐味。

亭主は一連の茶を立てる手前動作に入り、正客は茶碗に棗より茶杓にて薄茶が入れられるのを合図に、お菓子を食べ始めます。そして、茶碗が定位置に出される前に食べ終わらなくてはいけません。お菓子(生菓子)にもよりますが、4人の客なら4人分を皿か盆に出されます。順次お菓子を食べ、茶を飲み 最後の末客は飲み終えるまでに、菓子盆を180度回して下手に片付けて、飲み終わった茶碗を拝見し、躙りながら正客の前に戻します。正客はその茶碗を躙りながら進み 亭主に返してから自分の席に戻ります。

亭主は手前動作に戻り、正客が「どうぞ、おしまいください。」と声をかけます、声を掛けないと亭主はお茶を立て続けるのです。2杯くらいは、ありますが、3杯以上となると立てるのは見た事がありません。
亭主は一連の動作で「おしまいにさせていただきます。」と一礼して、おしまいの準備に入り、水差し蓋が閉まるのを合図に、今度は正客が「薄茶器、お茶杓の拝見」の声をかけます。

亭主は袱紗(ふくさ)にて棗、茶杓を清め、定位置に正客へむけて道具を出し、その後退席。正客は道具を引き、自分の席へ戻ります。末客まで拝見が終わり、正客に道具が戻ると正客は亭主の席へ返します。

茶碗と同じ動作ですね、戻る頃合を感じて亭主は水屋から茶室へ戻り、正客と相対し、一礼。正客は道具の事、軸の事、「お菓子のお生は、」とか、「薄茶のお詰は、」とか、何を聞いても構わないのです。棗の塗り、作者、茶杓の作、銘、など聞いて、亭主の趣向を探ります。

この問答がお茶の醍醐味でしょうか、亭主と正客の知識と感性の勝負ですか。

終わると道具を持って退室、茶道口にて客と亭主が総礼をして終わります。