土屋孝元のお洒落奇譚。お茶室にて
炉と風炉の違いを考える。

(2013.07.09)

11月から4月までの間、使う炉。
お茶では5月から風炉の点前の時期になりました。

炉と風炉? この違いはお点前をしたことのない人には難しいかもしれません。

炉とは、わかりやすく簡単に説明すると、11月から4月までの間、使うものです。冬は茶室も寒いので炉の方が部屋が暖まります。

昔の日本では煮炊きに囲炉裏を使っていました、その囲炉裏が茶室へ入った形態でお茶室の畳に開けた、(掘った?)炉に炉壇を入れ(付け?)炉縁を付け、灰をひき、灰型を作り、釜を乗せる五徳(五徳と書きますが、三つ脚です。)を仕込んだものです。

この炉や風炉に入れる灰とは、土用の頃(あの鰻を食べる夏の時期)番茶をかけて手で揉み込んで香りを付け、天日で乾かすのだそうです。これを何日も繰り返して灰が出来上がります。

何事も日本では、土用の天日干しが一番のようで、梅干しも、たしか、同じだったような、昔、母も作っていました。

この炉の炉縁(炉と畳の境目)にも、いろいろと種類があり、漆の作家が仕上げた漆の炉縁や、木の質感を生かした、黒柿の無垢のモノとか、古いお寺の古材を使ったモノとか、材質、作家物かによりピンキリです。


炉のまわりの羽箒、火箸、管。

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炉の中にいれる耐熱性の四角い枠は、炉壇といい、焼き物もあります、僕のお稽古の師匠の茶室は三原研さんの石器です。本来は聚楽の土壁で毎年塗り替えるようですが、今はどうなのでしょう。

先ほどの灰には灰型と言い、炭が燃えやすくする型を作ります、炉の場合は炉壇の四方に山を作るように灰を寄せて、中心部分を凹ませ、水の卦の記号を灰匙で印し、基本になる火をつけた炭を置いておきます。最後の仕上げに化粧灰という白い灰を灰匙で灰の上に砂浜に雪が降り出した様な景色で散らして完成です。

夏の風炉。
灰型を作るのが難しい。

風炉の場合はこの灰型を作るのが慣れないと難しいのです、自分でやってみて初めてわかるのですが、風炉の火窓側から灰匙を入れて手前と向こうの山を作ります、山と言っても上は平で灰匙で表面を綺麗にします、傷一つない平面です、自分から見て向こう側の山は作りやすいのですが、手前側自分側は手を逆手に匙を持ち替えて作ります。

この時風炉の方向を変えてはいけないと教わりました。山と山の間はなだらかな凹型にならします、いろいろな灰匙を使いながら、仕上げ、ならしてゆきます、この灰型は硬くてはダメで、触るとすぐに崩れるくらいに柔らかく仕上げます。これがまた、むづかしいのですが……。

これは茶事に客を呼ぶ亭主の仕事で、お茶事の前に準備しておいて、お客様が茶室へ入ると、炭手前というお点前を客に見せてからお茶事が始まります。炉の季節の寒い時期の茶事は炭に火を入れ、茶室を暖かくするという意味でもあるのでしょう。
 

風炉の灰型図 。風炉を横から見た灰の図です。

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茶室が暖まり、お料理とお酒が出て茶事が始まります。

料理のあと生菓子(おもがし)濃茶、薄茶と続く一連のお茶事の流れです。風炉とは1200年代、鎌倉時代に中国から伝わり、その時の道具の一つだったとか、台子、風炉、釜、などで釜は唐銅鬼面風炉(からかねきめんふろ)が博多へ将来したようです、まさしく唐物の道具揃えですね。

その後、日本では炉が作られ、形式化して今に至るということのようです。

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この他にも季節感の表現で、釣り釜、破れ釜などと釜の違いもあります。お茶を習い深く知るようになっていろいろとわかることかもしれません。

師匠の炉で使う釜は5、600年前の当時は普通に煮炊きに使った釜で形も飾り気のない質実剛健な釜で底に脚が三脚ついています、このまま、下に火を入れて煮炊きしたものでしょうか、釜蓋はあとから昔の茶人が見たてたもので別の蓋ですが、上手くあっていて見た目も姿形も綺麗で華美ではなく美しい。なかなかこんな釜は出ないと思います。

稽古で使うたびに思います、知れば知るほど、奥深く、先が見えない世界、それが面白いところでしょう。

釜を掛ける図。