土屋孝元のお洒落奇譚。器utsuwa考、日々の食卓をセンス良く。

(2010.09.23)

今朝、ニュースを見ていて、最近の外国人観光客は日本に来る楽しみのひとつに食べることを挙げていました。

それも、寿司、天婦羅、懐石ではなくラーメン、そば、うどん、タコ焼き、お好み焼きなどの比較的リーズナブルなB級グルメです。
この食べ物達にはそれぞれの器があり、それらしく美味しそうに並べられています。
この食文化を受け入れてもらえるとは、ありがたいというか味覚は万国共通なのだなあと思います。

©Takayoshi Tsuchiya

そんな時にふと思った事は、日本の家庭には和食、洋食、中華用とはいかないまでも、それぞれにあう食器があるのだなあと、世界的にもこれほどの食文化の国は珍しいようです。

そばにはそばのどんぶりがあり、ラーメンはラーメン用のではないにしろラーメンどんぶりがあり、夏は冷や麦を食べる器があります。カレーはカレー用のお皿です、味噌汁にはお碗があり、ご飯はご飯茶碗です。

お箸やナイフフォーク、スプーンを使い割り箸もたいていの家は持っています。
このように多様な食器を持つ国のutsuwaについての私感を……。

家では、もうだいぶ前から、有田焼の皿(其泉という窯元)を洋食にも、中華にも、和食にも、ケーキを食べるにも使っています。サイズがいろいろとあり(30cm、25cm、20cm、16cm)使い勝手よく、その皿は昔17世紀オランダへの輸出用の物の写しで白地に藍釉薬で文様(正確には芙蓉手)が入り何にでも使える便利な皿です。

先月、自分で皿を洗っている時に落して少し欠けてしまい、この皿はあるかなあとインターネットで探したところ、今でも変わりなく同じ物を制作している事がわかり、購入しました。

もう25年ぐらい前に購入した皿と比べても 釉薬の多少の違いにより藍の色具合は違いますが、同じ物でした。
このことからでも きちんとした窯元は同じ物を作り続けていてくれるということです。普段使いの食器類は同じ物を使いたいのでありがたいことです。

僕はお茶を始めてから、茶事の時や稽古で師匠のお皿や器でお菓子や料理をいただきます。いつも漆の使い方に驚き、感心しています。

師匠の持つ大変高価なお茶碗を使ったり、見たり、してきて思うのですが、一楽ニ萩三唐津などと言われますが、自分が気にいっていれば、順番は関係はなく、自分的には唐津(西岡良弘)が一番かなと。唐津にしても、斑唐津(まだら)、朝鮮唐津(ちょうせん)、絵唐津(えがらつ)、などと風合いが違い、カタチとあいまってますます迷うものです。

伊賀や信楽にも良い作家はいて、ほんとうに恵まれた国だなあと思います。
先日も『サントリー美術館』にて『誇り高きデザイン 鍋島展』(開催中。10月11日まで)を見ました。
鍋島は鍋島藩が幕府への献上品として、景徳鎮の写しから始まった藩窯と知りました。色絵の絵柄にモダンなモノが多く、今でも新しいと思うデザインです。さすがサントリーさん、ミュージアムショップにて写しの皿があり、お土産として売られていました。それなりの値段ですが……。

食器の話に戻ります。僕が藍と白地の皿が好きなのもありますが、家には白地に藍の皿や白磁の器が集まりました。韓国の白磁も好きで 韓国の作家、金益寧さん(古代祭事用写しの大きな器作品は、陶芸と言うより、現代彫刻です。)の白磁茶碗を普段のお茶や珈琲にも使ったりしています。この茶碗は白磁なので丈夫で壊れにくくて便利です。フローリングに落したくらいでは割れません。日本の茶碗より高台が高く、テーブルでの立ち姿が良いのです。

もしもご覧になりたい方は、有楽町の『織田有(おだう)』新有楽町ビル1階(Tel.03-3215-0125)にて扱っていますのでご覧ください。
 

金さんの白磁。
朝鮮唐津片口、藤木土平さん作の片口。

このほか自宅で使う漆器物のお盆(田中敏雄作)は使えば使うほど、色艶が良くなり、風合いが増して自分のモノになってきて、欠けができた時でも修理ができ元どおりになります。
漆について一考。昔から日本人は漆を上手く使ってきたのだなと思います。僕の大好きな興福寺の国宝八部衆達は乾漆で出来ていて、見た目よりも軽いようです。実際に抱えた事はないのであくまで見た目です。

戦乱や火災を乗り越えて、1300年ぐらい残るのには、この軽さが重要なのでしょう。

お坊さん達は、誰が迦楼羅様(カルラ)担当とか、鳩槃荼様(クバンダ)担当と決めて仏像を持ち出して避難させてきたのでしょうね。ありがたいことです。
 

話を食器に戻し、日本の家庭には沢山の陶器や磁器があり、種類も多く、組み合わせも無限にあり、どんなに無頓着でも、まあ何となく組み合わせが出来ると思います。この何となくの組み合わせで食器に対する感覚が磨かれているのでは。これほど多様な食べ物を食卓にのせる国はないのですから、自信を持って組み合わせの感覚を磨いていこうではありませんか。

少しでも、日々の生活でこの組み合わせを考えると面白いモノですよ。