岡部朋子のくつろぎマタニティヨガ妊娠期間の不安な時期を乗り切る方法。

(2010.12.21)

今では腕にずっしりと重い息子(5ヶ月)がお腹にいた昨年、私自身も実は心折れそうな毎日を過ごしていたものです。最近では胎動を感じられるという、WEB戦略室の田代さん(妊娠6か月)に一年前の自分を重ね合わせ、感慨深くアドバイス&レッスンをさせていただきました。

 
一般的にマタニティヨガは流産を避けるため、安定期(約5ヶ月目-15~16週)に入ってから始めるよう勧められます。確かに、安定期前の体はとても不安定です。見かけからはわかりませんが、体の中では赤ちゃんの命を育む大切な準備が行われており、過度な刺激は禁物です。しかし神経過敏に過ごさなくてはならない日々が妊娠を知ったばかりの心に大きなストレスを与えていることもまた事実です。重いつわりや周囲の期待も大きなプレッシャーです。絶対安静を勧める医師たちもこの14週をどうやって穏やかな気持ちで過ごすかについてはアドバイスしてくれません。

 

本当は、赤ちゃんの脳や器官が形成されるこの時期こそ穏やかに過ごすことが必要。

妊娠初期は未完成の胎盤に気遣うのと同じぐらい、心のストレスに注意する必要があります。強い精神的ショックが流産の間接的原因になることさえあります。しかし、ほとんどの妊婦さんはこの時期、ほとんど人に悩みを相談することなく、時のすぎるのを待っていることでしょう。

すでに安定期に入られた妊婦さんからも、最初の数ヶ月は想像を絶するほど精神的にしんどかったという声を聞きます。実際、「さあ、安定期ですからこれからはどんどん身体を動かして元気に暮らして下さいね」と言われるころには精神的にボロボロになってしまったという方もいます。また、慎重に暮らしすぎて体力が落ちてしまい、いざ運動しようとしても体力が追いつかないという方もいます。ストレスや食べづわりで体重が増えすぎてしまった妊婦さんもいることでしょう。安定期前とはいえ、新しい命を育み始めた妊娠初期の心と体の状態はもっともっと本当は大切にされるべきなのです。妊娠が発覚してからの日々をもっと穏やかな気持ちで過ごせていたら……お腹の中で大きくなっていく赤ちゃんの超音波写真を見ながら心の片隅では後悔している妊婦さん、実は少なくないのではないでしょうか。
どんなストレスが多いかというと――

 
 
◆とても幸せなはずなのに不安になったり、祝福の言葉がプレッシャーに感じたり、矛盾だらけ。

妊娠期間は人生で最も「アンビバレント」な時期だからです。

(アンビバレント – 【ambivalent】両義的・両価的。一つの物事に対し、相反する価値が共に存し、葛藤する状態のこと) と言われています。妊娠初期はまさにそのアンビバレントな10ヶ月の幕開けです。
本当は嬉しいはずなのに、不安で仕方がない。大好きなあの人の子供なのに、彼が嬉しそうじゃない。仕事が絶好調の時なのに妊娠してしまった。人生にはなんと矛盾が溢れていることでしょう。
ところで、ヨガの語源を知っていますか?インドの古い言語であるサンスクリット語で「yuj(ユジュ)」というのが、ヨガのルーツだと言われています。yuj とは「つなぐ、合わせる、結ぶ」という意味。陰と陽、太陽と月、天と地、ありとあらゆるものの反対の性質をただ認め、受け入れて、結んであげる。まとめてあげる。ヨガは奇怪なポーズと瞑想と誤解されやすいものですが、もともとはポーズも瞑想も手段にすぎません。ヨガとは苦しみを減らし穏やかに生きるためにはどうしたらよいか、と先人たちがあみだした智慧であり、苦しまないためには目の前にある現実に善悪白黒判断を加えることなく、優しく抱き入れてあげること、それができるようになること(禅の思想でマインドフルネス:善悪の判断を加えずただ目の前の状況を静観すること)こそがヨガだったのです。話が少し難しくなりましたが、要は矛盾だらけの現実をどうやって受け入れるか、という壮大な挑戦こそがヨガなのです。となると、人生で最も矛盾濃度が濃密になる妊娠期間中は、ヨガの恩恵を得るにはまたとないタイミングとも言えます。
 
 
◆言いたいことが言えない。言わなくてもいいことまで言ってしまう。

コミュニケーションがうまくいかないときは、喉の前をほぐしてあげましょう。

こういった場合、ほとんどと言っていいほど、喉の前が硬くなっています。喉の前が硬くなっていると、喉の後ろも硬くなり、頭痛や肩こりも引き起こされます。ただでさえ妊婦さんは心の緊張が身体にあらわれやすいのに、うまくものが言えなくなることで、さらに症状に拍車がかかるわけです。ヨガ的には喉のチャクラが閉じていると、ろくなことがありません。言いたいことが言えなかったり、言わなくてもいいことを言ってしまったり、相手の言うことを素直に受け取れなかったり……さらにこれが妊婦さんとなると状況はより深刻です。嬉しさをうまく表現できなかったり、パートナーの方を疑ってしまったり。それぐらい潜在的に起こりうるトラブルを予防する方法を妊娠初期のうちから覚えておくと便利です。もちろん妊娠期間を通して役立ちますし、出産後も人生のいろいろな局面で活用できます。

素直な心に戻るには:喉の前をもむ、これだけ。
喉の前を揉んでみましょう。

マタニティヨガの基本は「できることだけやる/できることはやってみる」です。喉のチャクラを開くと言うと怪しい感じがするかもしれませんが、実際普通のヨガでは肩立ちのポーズをしたり、魚のポーズをしたり、難解なポーズで開く方法もあります。でも、妊婦さんやヨガビギナーの方にいきなりこれらのポーズを強いることはありません。
つらいことはしない/させない。もっと穏やかなアプローチをしてあげる、これはヨガの「非暴力(アヒムサ)」という考え方です。
首の前を揉んでから、頭を前後に倒してみて下さい。首の関節が弛んだような気がしませんか?頭に新鮮な空気がいっていなかったから、素直な判断ができずコミュニケーションがうまくいかなかったのですね。

 
 

妊婦代表・田代さんの“素朴な疑問”。

 

Q.なんだか疲れてしまったとき。自分を癒してあげるポーズはありますか?

A.オーダーメイドの緩やかな子供のポーズがお勧めです。

直接床に座ると痛いので何か敷きましょう。ヨガマットである必要はありません。毛布やラグで十分です。椅子やソファの上にボルスターを横向きに乗せます。普通の子供のポーズは膝を閉じますが、マタニティヨガでは膝を開いて座ります。ボルスターをまたぐように膝を開いて正座をしてみましょう。“赤ちゃん一人分の思いやり”、がマタニティヨガの合い言葉です。 膝や足の甲が痛い方、膝の下やお尻の下に丸めたバスタオルを挟んであげると驚くほどポーズが楽になります。そのままボルスターに上半身をゆだね額を預けます(写真)。手はボルスターの上など楽なところにおきましょう。このポーズの目的はストレッチではありません。あくまでも疲れた心をゆだねる気持ちで額と心をゆだねてみる。こんな簡単なアクションで実は十分なんです。そのまま10分ぐらい眼を閉じて休んでみましょう。

 

ヨガって身体を柔らかくする運動だと思っていましたが、実は心を柔らかくする方法だったんですね。

はい。あっけないほど簡単なポーズですが、妊娠前もこれほどまでに「ゆだねる」時間を持てたことはなかったのではないでしょうか。お母さんが安心してリラックスするとお腹の赤ちゃんはとっても居心地がいいのです。オフィスなどでは椅子に座ったまま机に腕枕をつくりうつぶせるだけでもいいですよ。しばらくの間、何も考えずにただ額を預け、諸々の心配事から心を休めましょう。思い立ったらすぐにできる最高の贅沢です。

 

次回は、「赤ちゃんに新鮮な酸素を届ける」をお送りします。
 
 
 
田代さん着用のヨガウェア
『easyyoga(イージーヨガ)』
http://www.easyogashop.jp/Page/GOODSDETAIL-178

ヨガマット
http://www.easyogashop.jp/Page/GOODSDETAIL-104