岡部朋子のくつろぎマタニティヨガマタニティ・リストラティブでハッピーなマタニティライフを。

(2010.12.06)

穏やかな心で出産を迎えましょう。

こんにちは。7月に3,875gの第一子を出産したばかりのヨガ・インストラクター岡部朋子です。妊娠中の女性にとってのSOSは身体よりむしろ心! と実感しました。身体のことはたいがい気遣ってもらえますが、心の処方箋はどこにもおいていないのです。これから連載でご紹介するのはアメリカ発の新しいヨガ「リストラティブ・ヨガ」のマタニティ・バージョンです。私自身もこれらのポーズに日々助けられました。毎日の簡単な習慣が出産を待ち望む女性たちの心のレスキューとなれば幸いです。
 

まず、マタニティ・リストラティブとは。

妊婦さんの使命、最重要業務は休むこと、リラックスすることです。しかし、外に働きに出ることがあたりまえの現代の妊婦さんはいまだ多忙を極めています。物理的に用事がある、という多忙さだけでなく、妊娠をしたというのに一休み入れる間もなく、毎日が過ぎていくわけです。

マタニティ・ヨガにはもちろん「運動をして体力をつけお産に備える」という側面もありますが、運動をしたあとの心地よいリラックス状態を楽しむのがヨガの本来の目的です。例えば、私たちは今ここにヨガマットを敷かれ、さあどうぞ、リラックスしして下さい、と言われてもリラックスなどできるものではありません。しかしヨガのポーズで身体にじっくり刺激を与え、深呼吸の練習などをした後に、さあどうぞ10分ほど仰向けになってお休みください(ヨガで死体のポーズと言われるシャバアサナ)と言ってもらえば、待ってましたとばかりに心身ともに至福のひとときを味わえるわけです。

リストラティブ・ヨガというのは簡単に言うと、このリラクゼーションを運動抜きで直接味わってしまおう、という手法です。なので、一般的にヨガを始めても良いとされる安定期(約5ヶ月目〜)に入る前からでも安全に楽しむことができるヨガと言えるのです。もちろん、積極的な運動を勧められる安定期に入ってから普通のヨガと組み合わせてもよし、ヨガではない運動(ウォーキング、アクアビクス)などと組み合わせてもよく、覚えておくと一生もののヨガなのです。

ここからは、現在妊娠中、WEB戦略室の田代さんからの質問にお答えしますね。

【質問者】 WEBスタッフ・田代沙知さん

『マガジンワールド』のWEB担当。現在妊娠6ヶ月。酷暑&つわりを乗り越え、ようやく安定期に。「いまは、日々食欲&体重増加との戦いです。でも空腹を我慢しすぎて貧血を起こして以来、夕方にコンビ二でおやつを調達して、“ちょい食い”するのが日課に。『マタニティリストラティブ』に興味津々です!」

 

Q.妊娠2~3ヶ月までは流産しやすいって聞いたけど大丈夫ですか?

A.これは普段しない運動を急に始めたりすると流産の危険があると言われるものです。

実際、流産の原因のほとんどが受精卵の染色体異常であり母体側の原因ではないと言われています。もちろん激しい運動や衝撃は母体側の原因の一つとなり得ます。しかし、深くゆっくりとした呼吸が原因で流産をしたり、足首を回したから流産をしたりすることはありません。ましてや、赤ちゃんのことを考えながら心穏やかに過ごすことが流産の原因になることはありません。私たちの日常生活のどこまでが運動なのか、という問題なのです。歯ブラシ一つ取るにしても、颯爽ととる人もいれば、のっそりとる人もいますね。激しい運動で流産してしまうのは、胎盤が完成していないため、少しのショックではがれ落ちてしまう危険があるからです。

しかし、受精卵は物理的な理由だけではがれ落ちるわけではありません。赤ちゃんのベッドである子宮の血流が悪ければ、たとえ運動をしなくてもはがれ落ちてしまうかもしれませんし、多少の衝撃が加わっても、子宮そのものが血行良く元気はつらつとしていればうまく保持してくれるかもしれないのです。
また、妊娠初期は運動だけではなく身体を冷やすことも控えなくてはなりません。精神的に不安定だと(心が寒いと)身体まで冷えてきてしまいます。マタニティリストラティブで十分リラックスしながら身体を温める、という選択肢も流産予防には実はとても有効なのです。
安定期になるまで不安な気持ちで緊張しながら過ごすか、適度に身体をほぐしながらゆったりとした気持ちで過ごすか、どちらが流産予防に良さそうでしょうか?
それでは、妊娠初期の方にもおすすめのポーズをご紹介しますね。

 

「横向きのリラクゼーションポーズ」

床の上にマットを敷き、あるいはベッドの上でも構いません。身体を横向きに横たえ、くつろぎます。頭が落ち込まないように枕かボルスターを敷き、上の脚が下の脚にクロスしないよう、脚と脚の間に折り畳んだ毛布(あるいは薄い枕)を挟みます。足首の間にも折り畳んだ毛布を挟みます。上になった腕の下にも折り畳んだ毛布をおき、体全体が楽なカーブを描き、床の上に浮かびながら眠り込めるような感覚をつくりだします。

軽く眼を閉じ、ゆっくりとした長い呼吸を始めていきます。体全体の力を抜いていきたいのですが、逆説的ですが、リラックスするためには身体の中の緊張しているところを一つ一つ探していくことが実は効果的です。ここが緊張している、ここも緊張しているかも、というように身体の中を探っていくようにしているうちに、緊張が引き潮のようにひいていくのがわかると思います。リラックスしながらまだ観ぬ我が子と無言のコミュニケーションをとっているイメージを抱いてみましょう。わざとらしく話しかけなくてもいいのです。

20~30分ほど心と身体をゆっくりと休めたら、静かに起き上がってきます。このとき注意するのは、決して腹筋に力を込めておき上がってこないようにすること。腕の力を使ってゆっくりと起き上がってきます。すぐに日常生活に戻れるはずはないので、しばらくぼーっとした感覚を味わい、大丈夫と思うまで時が経つのを待ちましょう。妊娠中は急がない、と自分に言い聞かせていく大切な練習です。

このポーズは臨月まで大活躍しますので、妊娠初期の頃から覚えておくとずいぶん役に立ちます。

 

Q.「横向きのリラクゼーションポーズ」で使用しているボルスターって、どんな物ですか?

A.リストラティブヨガでは必須アイテムの堅めの長枕です。

身体を預けたり、足の下に敷いたり、抱き枕としても使えます。背骨をしっかりと支えるための硬さがあるのが特徴です。この枕、リストラティブヨガでの使い方をマスターすると実は手放さなくなるのは女性よりも男性。ゆだねる喜びを一度知ってしまうと、自宅でのリラックスタイムが簡単につくれます。

http://www.easyogashop.jp/Page/GOODSDETAIL-115

(こちらの製品はラベンダーの香りがします。ラベンダーは一般的に妊娠初期の女性に禁忌とされていますが、それはマッサージをしたりする場合です。実際、妊娠中の禁忌については非常に情報が錯綜していますが、道ばたに咲いているラベンダーの香りをかいで流産することはありません。好きな香りでリラックスすることはむしろ勧められることかと思います)

 

Q.つわりに効くヨガはありますか?

A.つわりの症状を緩和する、あるいはつわりの感じ方を楽にしてくれるポーズがあるので、ご紹介します。

胸と腹部を気持ちよく開く
「仰向けのヒロインのポーズ」です。

伝統的なヨガにおいてはこのポーズはボルスターなどを使わず「ヒーローのポーズ」と呼ばれています。妊婦さんが安全に楽しめるようアレンジしたマタニティ・リストラティブではあえて「ヒロインのポーズ」と呼ばれています。つわりは辛いものですが、ここは子供を宿せる女性であることに酔いしれましょう。深い呼吸によるリラクゼーション効果がつわりによるストレスを緩和します。また、安定期に入ってからの胸焼け、消化不良にも効果があるポーズです。

ボルスターの片側に座布団などを重ね、ボルスターを斜めに立てかけます。ソファなどに立てかけてもいいでしょう。正座から脚を両側に崩したかたちで座り、 背骨の下の方がボルスターの端にあたるように位置を決めてから、ゆっくりボルスターに背中を預けていきます。これは腰に隙間をつくらないようにするためです。膝が痛い方は、足首とお尻の間に丸めたバスタオルや座布団、枕などを挟むといいでしょう。足の甲が痛い方は、脚の下にもバスタオルをしいて保護してあげましょう。マタニティ・リストラティブのポイントは、つらいところはバスタオルやブランケットでカバーし、実践的に自分を大切にすること、自分を大切にする気分の良さを知ることです。背中をボルスターに預けたまま腕を両側にだらりと下げると、肩が開き、胸が広がるのがわかるはずです。

ポーズが正しくできているかどうかの目安は、背中を斜めになったボルスターに預けたときに、おでこがあごより高い位置にありながら、あごが詰まっていないこと。ボルスターの上に仰向けになるのではなく、あくまで斜めに身体を預けるのです。

その状態で深呼吸を始めてみると、自分の身体って本来こんなにたくさん酸素を取り入れられたんだ、というほど自分の呼吸が深くゆっくりできることに驚くかと思います。お母さんが身体に新鮮な酸素を取り込めば取り込むほど、言うまでもなく赤ちゃんにも新鮮な血液が届きます。

3~10分間、深い呼吸を楽しみましょう。首からかけるタイマーがお勧めです。終了時間が来たら、起き上がる時は、決して腹筋に力を入れないように。腕で床を支えながらゆっくり起き上がります。このポーズは脚のむくみにも効果的です。

 
次回は「妊娠期間の不安な気持ちを乗り切る方法」をお届けします。