一瀬恵のパンクなドイツ 詩的な広告? それとも 文化?

(2008.07.08)
「Ein Raum ohne Bücher ist ein Köper ohne Seele 本なき部屋は魂なき身体」 

ドイツで本を買うと時折、包装紙や袋、カードなどに、本に関する詩が印刷されていることがあります。

Hugendubel(フーゲンドゥーベル)のような書店チェーンというよりは、小さい町の本屋さんなどにその傾向が見られます。

先日、無名の書店である本を購入すると、その店の袋には、様々な時代の世界中の知識人が綴った、本に関する詩がプリントされてありました。

例えば表題にある次の詩。

“Ein Raum ohne Bücher ist ein Körper ohne Seele.“
「本なき部屋は魂なき身体」

これは古代ローマの政治家で哲学者のMarkus Tullius Cicero作の詩のドイツ語訳です。

原語では、韻を踏んでの事かもしれませんが、私はこの詩の後半が、「知識なき身体」や「頭脳なき身体」ではなく、「魂なき身体」となっている部分に魅かれました。なぜなら、活字を読み、知識だけを身につけるのではなく、読書をすることにより、感受性が豊かでハートの厚い人になる、と自分なりに解釈ができ、シンパシーを感じたからです。

この袋にはその他ドイツを代表する文豪Goethe作や作家のJean Paulなどの詩が記載されてありました。

このように偶然ではあっても、本に関する詩に出会い、本や読書について束の間考える機会を与えられることは、素晴らしいことです。

そして、もしかすると、「本を買うと詩がついてくる」という発想は、非常におしゃれな広告なのかもしれません。

なぜなら消費者は、本を買うという行為に美を感じ、また同時に購入した本に愛着を感じるようになります。またこの喜びは、読書を推進し、再度本を購入しようと思わせる潜在的な購買広告につながるような気がしますし、販促効果も大きいのではないでしょうか。

実際私もドイツで本を買うのが大好きです☆
その理由の1つには、本を買って素敵な詩に出会った、という経験も挙げられるのかもしれません。

この仕組みは、広告の一環なのか、それとも純粋に文化なのか。真意の程は如何に!?

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本を購入すると、その店の袋には、……。

大きなロゴの下にちょっとだけ、詩。