アート三昧 箱根旅 2日目 ラリック、星の王子さま、箱根寄木細工。箱根の魅力をあらためて実感。

(2008.10.30)

朝風呂に行ってきました。
すっきりした頭で朝食。
朝ごはんにも、湯豆腐とベーコンエッグをグツグツ、ジュージュー、目の前で温めていただきました。やっぱり熱々は美味しい!

  

さて、今日はマウントビュー箱根から徒歩1分のところにある『箱根・ラリック美術館』からスタート。ルネ・ラリックの作品は、日本でも人気が高いので、どこかで1度は目にしたことのある人も多いはず。でもこれほどのラリック作品を1度に見る機会はそうそうありません。ラリックがその経歴をスタートさせた宝飾品、香水商コティとの出会いによって始まったガラス工芸品はもちろんのこと、それに加えて、マントルピースや照明、壁といった室内装飾も多く展示されているのが、この美術館の特徴です。

ラリックの作品は、ガラスや金細工といった繊細ではかなげな素材を使っているにもかかわらず、そこに使われているモチーフはどれも写実的で力強い。一緒に展示されている彼のデッサンを見ると、彼がどれほど植物を観察していたのか、驚かされます。ある意味、ラリックは植物学者でもあったのかもしれません。そう考えてみると、四季の植物を1度に楽しめる植物園にいるような気さえしてきます。ラリックの手にかかると、シダや松かさなんていう、一見地味な植物も華やかな装飾品になるから不思議です。

現在、9月末で終了予定だった『ラリックに咲いたシーボルトの和の花』という企画展が、好評につき延長されています。日本の植物を広く海外に紹介したことでも知られるシーボルト。彼の時代から70年の時を経て、ラリックは日本の植物をモチーフに幾つもの作品を作ったそうです。日本文化がもてはやされていた当時のパリ。ラリックもまた装飾品の分野でジャポニズムに一役買っていたのですね。テッポウユリ、菊、藤、アサガオなどを扱ったラリックの作品を見ると、日本の植物の優美さを再認識させられます。

館内から一歩外に出ると、そこは見事な庭園。ラリックの余韻にひたりながら、植物を愛でてお食事、というのもこの美術館ならではの楽しみかもしれません。今は庭の植物たちも美しく色づいています。

箱根ラリック美術館

神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186-1
Tel.0460-84-2255

『ラリックに咲いたシーボルトの和の花』は11月24日まで。
カジュアルフレンチが楽しめるカフェレストラン『LYS』併設。
また、ラリック制作のガラスパネルで飾られた、オリエント急行の車両「ル・トラン」も、特別展示。こちらは完全予約制で、ティータイムを過ごせます。

 

 
次に向かったのは、『箱根ラリック美術館』から徒歩で10分ほどの『星の王子さまミュージアム』。『星の王子さま』の作者、サン=テグジュペリが過ごしたプロヴァンスやリヨン、パリの街並みが再現された、敷地内。所々に『星の王子さま』の登場人物の銅像や植え込みなどが設置され、歩くだけでもメルヘンチックな気分に浸れます。

展示ホールでは、作家としてのサン=テクジュペリ、飛行士としてのサン=テクジュペリ、の両面から、彼の生涯が解説されています。『星の王子さま』は、サン=テグジュペリがニューヨーク亡命中に執筆されたのですね。そんなことを知らずに読んでいました。サン=テグジュペリの世界にこうして触れて、『星の王子さま』以外の小説にもチャレンジしたくなりました。

 星の王子さまミュージアム

神奈川県足柄下郡箱根町仙石原909
Tel.0460-86-3700

 

 

 

『星の王子さまミュージアム』に行ったあとは、そのハス向かいにある『ヴルストハウゼ川上』に立ち寄ることを忘れてはなりません。神奈川県郊外にあった精肉店が、自家製ハムとソーセージの専門店として、この仙石原に移転したのは昨年6月のこと。本場ドイツのハム・ソーセージに魅せられ、日本の風土にあった自家製のハムやソーセージを作り始めたご主人は、その後数々の食肉加工品のコンテストで受賞しているそうです。

夏は涼しく、湿原があるために冬も乾燥しない、ここ仙石原は熟成が必要な生ハムやサラミを作るのに最適な環境だそうです。原料は厳選された国産豚と国産牛。保存料や着色料、増量剤は使用していないそう。今は、あまりにもお客さんが多く、その生ハムやサラミは品薄状態。いつもならばパンとソーセージの盛り合わせなどが店内で食べられる軽食も、今はお休みだそうです。う~ん、残念。

いろいろと悩んだ挙句、冷凍保存ができるというベーコンのブロックを購入。カルボナーラに、ポトフ……。奥様にお勧めされたベーコンの野菜炒め、というのも頭から離れなくなってしまいました。早く食べたい!

 
ヴルストハウゼ川上

神奈川県足柄下郡箱根町仙石原934-39
Tel.0460-85-2555

 

 

ホテルで気になったのが、箱根のお土産の定番「寄木細工」の小物たち。改めて眺めてみると、けっこうモダンでかわいい。聞いてみると、工房を見学させてくれる木工所があるとのこと。せっかく箱根まで来ているのだから、と足を運んでみました。

実演してくださったのは、本間木工所の代表取締役であり伝統工芸士でもある本間昇さん。実は、教科書の取材が終わったばかりだとかで、制作材料はすべて片付けられた後だったのですが、わざわざ仕事場に戻ってきてくださいました。感謝。

寄木細工の特徴である寄木文様は、およそ100種もあるそうです。この文様を作るのに重要なのが木材の自然な色合いと木肌。例えば白系にはアオハダ、モチノキ、ミズキ、黄色系にはウルシ、クワ、ニガキといった具合に、何種類もの木材を使い分けて、文様を織り成すのだそうです。よく見ると、ホント、考えていたよりもたくさんの色が使われています。細かい!

 
寄木細工ができるまで

三角、四角、六角に切断した部材を組み合わせて、接着剤で張り合わせ文様を作る。 できた文様を切断して、寄木のブロックを複数作り、さらにこのブロックを大寄せする。 大寄せしたブロック「種板」をカンナで削り、経木(きょうぎ)状の「ヅク」を作る。 「ヅク」を箱などに貼って完成。

その仕事の早さには、ホント感動でした。
「いい? 1度しかやんないよ。あっという間だよ」と前置きされて、手を動かされるのですが、本当に早い。文字通り、あっという間に、手は元の位置にもどっているのです。

寄木細工が生まれる工程を勉強したあとに、改めてその作品を眺めてみると、感慨深いものです。じっくり店内を見させていただきました。お土産も買ったことだし、そろそろ箱根とお別れです。次は、『ポーラ美術館』の企画展が新たに始まる春に来たいなぁ。

 
本間木工所

神奈川県足柄下郡箱根町湯本84
Tel.0460-85-5646
江戸時代より昭和初期までの作品を展示した『本間寄木美術館』、体験工房併設。

 

1日目「芸術の秋、すすきの原の自然と、佐伯祐三、藤田嗣治の芸術に触れる」を読む。

 

  朝顔の飾り付けをした納涼電車のなか。強羅の芸者衆と
白黒写真提供/強羅 島写真館