from 北海道(道央) – 2 - 「北海道ワイン街道」へとつながる夢。

(2009.08.10)

山梨県でワイン用葡萄を収穫!

こんにちは! 東京で生活している頃、私は週末になると山梨県・塩山のとあるワイナリーに、ワイン用葡萄収穫のお手伝いに足を運んでいました。

8月から9月末までの間、生食用にもなるデラウェアから始まり、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンまで、順次収穫が進む中、収穫の合間に葡萄の実を食べたりしながら、葡萄の種類(セパージュ)別に、これほどまでに個性が異なるものなのだということを実感したものです。また、山梨県のワイナリーは、北海道と比べると比較的狭い範囲に点在していることもあり、日帰りで幾つものワイナリーを訪ねて歩くという楽しみを知ったのも、山梨あってのことだと心から感謝しています。

「ワインツーリズム山梨」

山梨のワイナリーでの筆者収穫風景。

 
北海道は、実は国内最大のワイン用葡萄生産地であった!

そういった生活を終え北海道に戻り調べて見ると、加工専用品種葡萄の生産量では北海道は国内の4割弱(2005年統計で38%)の生産量を占め、国内最大のワイン用葡萄の生産地であったことを知ってしまったのです。

知らなかった事実を知った嬉しさとともに、「ワイン文化史研究家」の端くれとしての小さなプライドで更に調べてみると、石狩、空知(そらち)、後志(しりべし)は、ワイン用葡萄の生産量の多さはもとより、ワイナリーが集中していることを発見してしまいました!
中でも、北海道ワイン直営農場である『鶴沼(つるぬま)ワイナリー』は、東洋一の広さで、なおかつ、国内唯一つの通称「ガンダム」といわれる機械で営農されていることも知り、出身地である北海道の凄さを知らずに生きてきたことを、少々恥ずかしく感じてしまいました。

余談ですが、今年4月に東京・丸の内にある『ビストロリヨン』にて開催された北海道産ワインのイベントに参加された皆さまの「北海道でワインを生産していることも知らなかったし、これほど多くのワインがあることを始めて知りました」という生の声を多数お聞きし、当たり前のことですが、北海道に住む我々が知らなかった以上に、その知名度がないという事実を厳然と知らされました。

鶴沼ワイナリー。
日本に唯一の通称「ガンダム」。
東京『ビストロリヨン』でのイベント風景。

 
「北海道ワインツーリズム」推進協議会の発足。

北海道に戻り人脈が広がってくると、思いを同じくする人たちが自然と集まってくるものです。

「ワイン文化史」を研究していくと、ワインの保管・運搬技術を含めて、人類のワインに対する飽くなき欲求に端を欲した技術・産業開発などが一体となって、ワインを支えていることを知ることができます。北海道は製造業を中心とする第2次産業が脆弱です。が、ひょっとすると北海道産ワインの知名度と品質が向上することにより、例えば木工の旭川と鉄鋼の室蘭の企業とが一緒になって「ソムリエナイフ」を開発するとか、ガラス文化の街である小樽で「北海道産ワインの魅力を最大限に引き出すワイングラス」を製造するなど、周辺産業の育成にもつながるのではないかという発想を持つに至りました。まさに、ワインを通じて一つの産業クラスターの形成が可能なのではないかと夢みるようになったのです。

そうした中、思いを同じくするメンバーが集まり、今年3月、「北海道ワインツーリズム」推進協議会が設立されました。協議会は、(1)北海道におけるワインツーリズムの普及と定着を図ることを通じて、歴史の浅い北海道の各ワイナリーが各々の特性や特色を磨きながら、世界に通用するワイナリーへと発展することを目指すとともに、(2)ワイン周辺商品の開発を促進し、ワイン周辺商品を含めた関連商品の販売力の強化を図り、さらには、(3)北海道への短期移住の促進、(4)農業従事者の確保などの副次的効果の創出にも寄与すべく、ワインツーリズムを通じた北海道の活性化に資することを目的として、“志”を同じくした生産・消費・流通・観光・情報発信などのメンバーによって設立され、北海道のワイン文化史における輝かしい一頁を拓いたのです。

「北海道ワインツーリズム」推進協議会

「北海道ワインツーリズム」推進協議会発足。

 
「北海道ワイン街道」へとつながる夢。

北海道は広い! 実際にワイナリーを巡る旅を実践してみると、札幌から空知管内最北の『歌志内太陽ファーム』まで、高速道路を利用しても2時間半かかることが分かります。

山梨県のように一日で周れるようなワイナリーツアーは無理だろうと直感しましたが、それは逆にプラスの発想を産むもので、朝一番の羽田空港発帯広行きの飛行機に乗れば、池田町にある『十勝ワイン』で昼食を取りつつ、富良野、さらにイタリアンのお店が充実している滝川(後日、改めてお店を紹介します)に一泊すれば、翌日空知や石狩のワイナリー数箇所を周ることは可能ということに気が付くのでした。

こんなに広い北海道です。2泊程度の旅行では、ワイナリーのすべてを知ることは不可能です。そうしたときに、受け入れ可能な「短期移住」施設も石狩・空知管内には充実していて、空知では、25ある市町のうち24の市町に温泉もあり、さらには医療機関も充実していることから、「ワインツーリズム」で一度北海道の魅力に触れてみた後に、「短期移住」でお気に入りのワイナリーを巡ってみてはいかがでしょうか?

そうです。そう考えてみると、北海道の中で、帯広、富良野、深川、歌志内、滝川、浦臼、岩見沢、千歳、札幌、小樽、余市、洞爺湖、乙部、函館(飛んで奥尻。漏れている所もあると思います。)まで一筆書きでつながる「北海道ワイン街道」が見えてくるではありませんか!!

ワインツーリズムを一つの契機として北海道が新たな発展を遂げるため、「北海道ワインツーリズム」推進協議会所属メンバー以外にも、阿部さおりさん、鈴木宏一郎さんなど、北海道の活性化のために一生懸命に頑張っている皆さんがいらっしゃいます。
北海道が「量」だけではなく、「質」の面でも日本一と言われるようなワイン造りが可能となった暁には、ヨーロッパ各国にあるような「ワイン街道」を、皆さんが心地よく走られていることになるものと夢見ております! ただし、飲酒運転は厳禁です(笑)。

阿部さおりさん

鈴木宏一郎さん