from 北海道(道央) – 10 - 幌加内町産の「新蕎麦」を食す。

(2009.09.29)

空知地方は日本一の蕎麦生産地。

北海道の美味しい海産物や農産物の全体的な魅力は、国内外にも広く伝わりつつあるのだろうと思っています。そうした中、蕎麦(そば)の都道府県別収穫量の国内No.1は、北海道であることをご存知でしたでしょうか?

三船さんが打った十割蕎麦。

平成20年のデータでは、国内収穫量の49%である11,400tを北海道で収穫しています。その中でも、空知(そらち)地方の収穫量は北海道内の半分を占め、空知地方の最北に位置する幌加内(ほろかない)町が長年にわたってトップを占めているのです(農林水産統計による)。また、全国市町村別の収穫量を見てみると、幌加内に続いて、同じ空知地方の深川(ふかがわ)市が第2位、沼田町が第5位に入っており、「蕎麦と言えば信州・長野」と想像しがちですが、収穫量では北海道、中でも空知がトップというのが現実なのです。
 
空知地方の魅力データ

 
幌加内町で「新蕎麦」の蕎麦粉を入手したが……。

ちょうど「新蕎麦」の時期を迎えている北海道。空知地方で生産している蕎麦の種類も豊富で、キタワセ、ホロミノリ、韃靼蕎麦など、地域特性に応じて多様化しています。
 
先日、仕事で幌加内町を訪れた際、「ホロミノリ」の新蕎麦粉が販売されていたこともあり、取りあえず購入してみました。その後気がつくのも妙な話ですが、そもそも自分は蕎麦打ちをするわけでもないし、「誰か蕎麦打ってくれる奇特な方はいないかな?」と数人の顔を思い浮かべ、「そうだ!彼なら小樽で蕎麦を打ってくれるに違いない!」。
 
顔を思い浮かばれた彼にとっては運がよかったのか悪かったのか分かりませんが、小樽市役所に勤務される大御所であり、蕎麦打ちの会に参加していると聞いていた三船貴史(みふね・たかし)さんであれば、間違いないはず。そう思うのと同時に連絡を取り、その週末に「新蕎麦」の会を開くことになりました(笑)。

「幌加内伝承手打ち蕎麦店経営研究会」に所属している『そば屋八右ヱ門』さん。
『そば屋八右ヱ門』さん名物の「二色モリ」。キタワセ10割りの太打ち蕎麦(写真右)とホロミノリによる二八細打ち蕎麦(写真左)の2種類を、比較しながら同時に味わうことができる。
日夜「蕎麦打ち名人」目指して鍛錬を続けている三船貴史さん。

 
新蕎麦を試食する会場は『酒処 ふじりん』。

蕎麦打ちをする皆さんにとってみると、幌加内町産の「ホロミノリ」の新蕎麦粉は、実に貴重なものとのこと。
 
三船さんは土曜日の朝から御自宅で蕎麦を打ち、「小樽でおでんと言えば、酒処『ふじりん』でしょう」と言われるお店の開店時間に合わせて関係者が集合。

他のお客さまのご迷惑にならないようにとの我々の少しばかりの心遣いですが、40年近く小樽で暖簾を守り、2002年に先代から暖簾を引き継いだ4代目女将となる田中数子(たなか・かずこ)さんのご好意がなければ、このような会は開けません。ありがとうございました。
 
小樽の街では古くから多くのおでん屋さんが店を出していたと聞きますが、『ふじりん』さんは、おでんのタネも豊富であり、おでん以外にも、季節の魚や旬の食材を豊富に仕入れてお客さまにお出ししています。もちろん、日本酒や焼酎もバリエーション豊富に用意されています。
 
「観光で小樽に来られたお客さまが店に立ち寄られた際に、小樽在住の常連さんたちとの会話を通じて、北海道や小樽での生活や魅力の一端を知っていただけ、店に立ち寄って本当によかったと言ってくださるお客さまの笑顔が、本当に嬉しいのです」と語る田中数子さん。

ただ食べる、飲むだけではなく、会話を楽しみに店を運ばれる皆さんで、お店はいつも賑わっているのです。

『酒処 ふじりん』さん。
女将・田中数子さん。
店内には日本酒や焼酎が所狭しと並んでいる。
仕込みが終わったばかりの「おでん」たち。

 
改めて幌加内の蕎麦の実力に感激!!

さて、早速三船さんが用意してきた蕎麦の完成品を見てみると、二八と十割の2種類が用意されています。さすがです。自分の好み(=わがまま)で、十割をいただくことに。
 
蕎麦の茹で時間もしっかりと女将に指示し、出来上がった蕎麦を早速いただいてみると、蕎麦の香りがしっかりと口の中全体に広がり、しかも絶妙な喉越し感に一同感激!!

「重たい蕎麦粉をはるばる小樽まで持って来てよかった」と、自分もとっても感激!!
「加水率がちょっと……」と謙遜する三船さん。しかしながら、蕎麦打ち技術は、間違いなく名人に近付いているものと参加者全員が満足した夜となりました。
 
ちなみにこの日は、ワイン文化史研究家である自分のために田中数子女将は、「北海道ワイン(株)」さんのセパージュ別・白ワインのハーフボトルを3本取り揃え、赤ワインもしっかりと用意してくださっていました。

また、料理もどれも絶品と言える、すり身揚げ、シメ鯖、天麩羅、身欠き鰊などなど、お陰さまで用意していただいたワイン全てを空瓶にすることができました(笑)。
 
これからの季節、空知地方の新蕎麦粉で打った蕎麦を空知で、また、「おでん」がさらに美味しく感じられる外気温になっている小樽に足を運ばれ、「北海道の秋の味覚」に舌鼓を打たれてみてはいかがでしょうか?

茹で上がった「幌加内産 新蕎麦」。
おつまみに揚げてくださった蕎麦。
蕎麦には北海道ワインの白(セイベル9110やケルナー)が合います。
すりみ揚げ。
シメ鯖(さば)。
天麩羅の盛り合わせ。
身欠き鰊の甘味噌仕立て。
おでんの盛り合わせ。
しっかりと冷やされている白ワインたち。