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世界三大ブルーチーズのひとつ、AOPロックフォールのミルクを提供してくれる「ラ・コ―ヌ」(La Caune)という種の羊です。ロックフォールはフランス南西部のミディ・ピレネー地方アヴェロン県の大自然のなかで作られるチーズです。 |
2月後半から3月初旬は、子どもたちの冬休み。パパとママンもこの時期に有給休暇を取って、家族揃ってプチ・バカンスを楽しみます。このお休みはスキー休暇とも呼ばれていて、多くの家族がアルプスやピレネー山地に出かけます。今年は冬季オリンピックの影響で、スキー場は格別な賑わいを見せました。
さて、パリでもこの時期、家族で楽しむことのできるビッグイベントが開催されます。それは15区のポルト・ド・ヴェルサイユで行われる国際農業見本市。今年の開催期間は2月27日から3月7日までで、合計で約65万人の来場者を記録しました。農業に携わるプロにとっては、大切なビジネスの機会であり、また「農業従事者が直面している危機にどう取り組むか」、「持続可能な開発」などの現在の課題について話し合うための重要な場。一般消費者にとっては、フランスの農業、畜産業の豊かさを身近で体験し、食物の大切さを考える機会となる貴重なイベントです。
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農業市の会場は15区のポルト・ド・ヴェルサイユ。東京ビッグサイトのような見本市会場で。
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「キュル・ノワール(黒尻)」というベタなネーミングのリムーザン地方の豚。赤ちゃんのころからお尻に黒い模様があります。 |
見本市の最大の目玉は、各地から集まった多種多様な畜産動物。白いシャロレ、焦げ茶色の巻毛をしたリムーザン、角が美しいサレールなどバラエティー豊かな牛や、山羊、羊、豚、鳥などの動物が一斉に集まる様子はまさに圧巻。簡単な柵で仕切られているだけなので、本当にすぐ傍で動物たちを見ることができます。横にあるパネルを見ると、種の名前や産地、どの食品の原料になっているのか、過去にどんな賞をとったことがあるか、などが解説されています。広い会場を周っていると「あ、あのチーズはこの牛のミルクからできてるんだ」、「羊の顔もいろいろあるなぁ。毛は意外とかたいのね」、「お尻が黒いから、”キュル・ノワール(黒尻豚)”…か」、などなど面白い発見が次々できて、何時間いても飽きません。
「生物多様性」の保全が世界中で叫ばれている今、畜産動物だけでもこんなにいろいろな種があるのかと感嘆させられるこのイベントは、子供だけでなく大人にとっても教育的で価値あるものです。そして、普段食卓に上っている食物が、どの動植物から来ているのか、
生産者がどのように生物と共に生きているかを目で見て知ることは、私たちが食を通じて大地とつながっていることを改めて実感し、食物を大切にする心を養うことに繋がります。
農業市のもうひとつのお楽しみは、フランス各地の食の特産品を賞味できること。アルザスの地ビール、リムーザンのステーキ、プロヴァンスのオリーブ、ペリゴールのフォアグラ、サヴォワのチーズ料理、コルシカのサラミなど、美味しいものが勢ぞろい! もちろん、ワインとシャンパーニュのスタンドもあります。今まで知らなかった新しいご当地グルメを発掘することもできて、食いしん坊にはもうたまりません! 食欲だけでなく、その地方に行ってみたい旅心もそそられます。
お酒好きの私はあちこちのスタンドでちびちびやっているうちに、家路に着く頃にはすっかりいい気分。農業大国、美食の地フランスの凄さを改めて実感した1日でした。