from パリ(石黒) – 16 - パリ、アート散歩。《11》絵描き小僧が旅に出た。

(2010.08.02)
スイスのバーゼルで行われたアート・バーゼル41での、カルティエ現代美術財団のプレヴューパーティーの様子。写真/Michiko Ishiguro Art Collectors Lounge, Art Basel 2010, 2010 © Office Kitano Inc.

パリのカルティエ現代美術財団(Fondation Cartier pour l’art contemporain)で開催中のビートたけし / 北野 武『Gosse de peintre – 絵描き小僧』展が、スイスのアートバーゼル(Art Basel)に登場!

アート・バーゼルとは、パリのFiac、ロンドンのFreize Art Fairと並び、もっとも影響力のあるコンテンポラリー・アートフェアの一つ。1970年に始まったアート・バーゼルは、1990年代に一時低迷しますが、Marc Spieglerのディレクションの下、コンテンポラリー・アートのセレブイベントへと変貌。10年前には、アメリカのマイアミビーチに、妹分となるアート・バーゼル・マイアミ・ビーチをオープン。12月上旬に開催されるマイアミバージョンは、スイスとはまったく違った雰囲気で、さらなるパーティー化が進んでいます。41回目を迎える2010年のアート・バーゼルは、6月15日から20日で開催。他の大御所アートフェアと同様、アート・バーゼルの会期に合わせてバーゼル周辺では、様々なOFF SHOWが企画され、街中がコンテンポラリー・アート尽くしとなる5日間です。

カルティエ現代美術財団は、4年来、アート・バーゼルのスポンサーを務めており、以来アートコレクターズ・ラウンジというVIP専用ラウンジにスタンドを展開。スタンドにはカルティエ現代美術財団で開催中の展覧会のテーマに沿った装飾が。今年はビートたけし / 北野 武『Gosse de peintre – 絵描き小僧』展に合わせて、カルティエとのコラボレーションで新たなクリエーション『Nécessaire Gosse de peintre(絵描き小僧の道具箱)』を発表。
 

ヴィヴィッドなイエローと、内張り布の赤とが、まるで子供のおもちゃ箱のよう。元気な色使いに誘われるように、中に何が入っているのか、覗き込む人たちが多数。右の画像が、カルティエ現代美術財団での展覧会のカタログ表紙も飾る鯨の絵。写真左/Michiko Ishiguro Art Collectors Lounge, Art Basel 2010, 2010 © Office Kitano Inc.右/Acrylic paint on canvas, 91 x 117 cm  Exhibition Beat Takeshi Kitano, Gosse de peintre, Fondation Cartier pour l’art contemporain, Paris, March 11 – September 12, 2010 2010 © Office Kitano Inc.

 

カルティエの職人によって製作された道具箱は、展覧会カタログ表紙に採用されているビートたけし/北野武の絵から取った鯨のフォルム。大きさは、旅行鞄ほど。外部は、イエローの革で覆われ、ゴールドの金具がカルティエらしさを醸し出しています。持ち手には、鯨の噴水のモチーフをアクリル樹脂で爽やかに表現。鯨の外周を模り、本体と尾ひれ部分の隙間を忠実に再現するのは、かなり難易度の高いテクニックだったのだとか。革表面には、ビートたけし/北野武の絵のモチーフが型押し。カルティエのアトリエの技が、駆使されています。

道具箱を開くと、蓋部分には、特製品のクロッキー帖、道具箱本体と同じ革で作られた書類ケース、展覧会グッズでもある塗絵帖を収めたスペシャルボックス(白)、そしてこれまた、この道具箱のためだけに刷られた限定サイズのリトグラフィー。

箱本体は二段構成になっており、鯨の体部分は、上段が手前に引き出せるシステム。尾ひれ部分は、上段部分が取り外せる仕組み。この尾ひれ部分には、Tシャツやバッジ、色鉛筆、ベレー帽など、カルティエ現代美術財団の書店にて購入可能な展覧会関連グッズが収納されています。

鯨の体部分には、画家が絵を描くのに必要な、絵の具、筆、筆を洗うためのコップ、三脚、そしてパレット、エプロン、シフォンと、今回のスタンドのためにカルティエによって製作された特注品。特にパレットは、木製ではなく、木目調の黒曜石。厚みわずか7ミリメートルでの加工を実現できるのは、ヨーロッパでも、数える程の職人しかいないのだとか。

そして目玉であり、隠し玉であるのが、ショッキングピンクの箱。中に入っているのは、空気で膨らませる女性の人形。どこでもいつでも、画家の「絵心」を満足させる絵モデル。どんな人形が入っているかは、これまでのところ一般には非公開。カルティエ現代美術財団での展覧会にその秘密のヴェールを紐解くヒントがあり。展覧会の遊び心を引き継いだ作品です。

この『Nécessaire Gosse de peintre(絵描き小僧の道具箱)』は、合計3点のみの特注品。2010年12月2日から5日まで開催されるアート・バーゼル・マイアミ・ビーチでも展示された後、1点はチャリティーオークションにて販売の予定です。

展覧会関連グッズのひとつ、ビートたけし/北野武の絵を元に作られた塗絵帖のデザインを、多層構造で壁に再現。写真/Michiko Ishiguro Art Collectors Lounge, Art Basel 2010, 2010 © Office Kitano Inc.

 

道具箱のクリエーションに加えて、カルティエ現代美術財団のブースがとりわけ人目を引いたのは、その美術装飾。パリのカルティエ現代美術財団での展覧会ビートたけし / 北野 武『Gosse de peintre – 絵描き小僧』が、ヴィヴィッドな色に溢れているのに対して、今回のアート・バーゼルでのスタンドは、白とブルーを基調に、赤がポイントに使われていてとてもシンプル。スタンドのコーナー4ヶ所に設けられたショーケースには、北野武監督作品の『HANA-BI』に登場する絵をモチーフにカルティエ現代美術財団での展覧会のためにイタリアで製作された花瓶が展示。

スタンド外から一見すると、端整で隙のない美しいスタンドですが、実は足を踏み入れると、奥の一面にはなんと、塗り絵壁が用意。色鮮やかに取り揃えられたポスカで、猫が水槽に張り付いている塗絵を、訪れた人々が実際に塗れるという趣向。子供も大人も、誰でも実は絵描き小僧になれる、という演出がなんともお茶目です。

 

スタンド向かって左側に、塗り絵壁が。プレビューの夜は、シックに装ったコレクショナー、アート関係者達が、はしゃぎながら塗絵に興じていました。真ん中はCartier VIP Lounge, Art Basel 2010 写真中/Philippe Gonthier 写真左・右/Michiko Ishiguro Art Collectors Lounge, Art Basel 2010, 2010 © Office Kitano Inc.

 

道具箱のショーケースを取り巻くのは、青ダルマが組み込まれたレール。ジェットコースターを連想させるこのモチーフは、パリのカルティエ現代美術財団では、地上階の天井に三枠連なっており、迫力です。展覧会の詳しい様子は、マガジンハウス『ブルータス』687号での北野武の特別インタビューにて。開放感溢れるスペースの中で繰り広げられるビートたけし / 北野 武『Gosse de peintre – 絵描き小僧』展は、2010年9月12日まで。
 

パリのカルティエ現代美術財団でのビートたけし / 北野 武『Gosse de peintre – 絵描き小僧』の展覧会の様子。絵だけではなく、巨大なオブジェや映像作品、子供から大人まで参加できる作品もあり、肩肘を張らずに楽しめる展覧会。View of the exhibition Beat Takeshi Kitano, Gosse de peintre, Fondation Cartier pour l’art contemporain, Paris, March 11 – September 12,2010 写真/Olivier Ouadah 2010© Office Kitano Inc.

 

カルティエ現代美術財団
Fondation Cartier pour l’art contemporain

http://fondation.cartier.com/
261 boulevard Raspail 75014 Paris France