from 香川 – 9 - 瀬戸内国際芸術祭2010 高松港と豊島編世界が注目するアートと海を巡る百日間の冒険。

(2010.08.05)

瀬戸内国際芸術祭2010とは?

今にも宇宙へと突き抜けそうな青空の下、2010年7月19日(海の日)を皮切りに、岡山、香川を結ぶ瀬戸内海に浮かぶ7つの島々と海・高松港・宇野港を舞台とした世界初の現代アートの祭典『瀬戸内国際芸術祭2010』がはじまりました。開催期間は100日間、7月19日から10月31日まで。現代アートと海を五感で思う存分感じながら廻る冒険の始まりです。

高松港の全景写真です。

香川県の玄関口高松、サンポート高松(高松港)を起点とし、高松港からフェリーで約20分~約2時間内でたどり着きます。7つの島=小豆島、直島、犬島、豊島、大島、男木島、女木島で、17の国と地域から参加する75組のアーティストの作品群が島々と高松に分散しています。

今夏の瀬戸内国際芸術祭の舞台の主役は、島と海!「空」を真っ白の画用紙に例えると、「島」、「海」、「食」、「島の地域住民」「こえび隊(ボランティア)」がそれぞれの発する色彩が加わり、またそこへ参加する多くの「魂」がさらに加わり一枚の絵を描き上げます。まるで、瀬戸内海一帯が、現代アートそのものです。

 
かつて、交通の大動脈としても大切な役割を果たしてきた瀬戸内海。人はその海の美しさに魅了され続けてきました。中には島を丸ごと購入している人もいるほど!

近代化に伴い、海が交通路として重要性を失いつつある今日、取り残されるように活気を失ってきていました。この芸術祭は、瀬戸内海に浮かぶ島々と世界を人が繋ぎ現代アートで島の復権を目指す壮大な試み。まさに『海の復権』です。

身体で感じ、自分の足で歩き体感し、人とふれあい、7島7色の風を五感で感じとり島の風土から得る息吹を、自分と向き合う時間の中でゆっくり味っていきましょう。

 

高松うみあかりプロジェクト~「魂」の群衆~

高松のべイエリア・サンポート高松(高松港周辺)では、18日に前夜祭が行われ、ひと際賑わいをみせました。中でも高松港界隈にあるアート広場では、現代美術家・椿昇さんプロデュースの「高松うみあかりプロジェクト」の「海の生き物」をテーマとしたオブジェ各2㍍~4㍍16基が夜の高松港を幻想的に浮かび上がらせました。

オブジェは、椿昇さん指導のもと、大学生や地元の小中学生らが有志で創作したもの、応募により集まった参加者が集い創り上げたものなど様々です。
創り方は、木で枠を組み針金で形を作りその中に電球を入れます。

糊をつけて紙をはりつけ完成させていきます。
私も側で眺めていて童心に返ることができ芸術祭への高揚感がますます高まりました。

 
椿昇の「高松あかりプロジェクト」です。子供から大人までが集い、椿昇さん指導のもと、製作した作品です。

 

豊かな島 豊島(てしま)
 
ある晴れた日の朝、高松港に立つ。
磯の香り漂う防波堤。
頭上に広がる青い空。
力強い入道雲。
心地よい風が吹く。

大巻伸嗣さんの作品『Liminal Air:core』(高松港にて)時と共に変わる光と空気の色、景色が鏡面に仕上げられた柱の表面を変化させます。人により見方は異なりますが、高松の環境を可視化させるゲートとなります。

そしてカモメが舞う。
陽光に照らされ耀く海原
豊かな島を目指し
アートの聖地が広がる旅路へ

 
7つの島々の中心とも言える豊島から
未知なる世界をお届けしましょう。       

 

豊島の壇山(香川のみどり百選に選ばれている)の山頂から瀬戸内海を眺めた光景。
豊島行きのフェリー「まりんあすか」

豊島はゆたかな島なんです。
豊島はおいしい島なんです。
豊島は美しい島なんです。
豊島は心が豊かになる島なんです。
豊島は笑顔溢れる島なんです。
豊島はやさしい島なんです。
豊島は信号機が無い島なんです。
豊島は無限大の島なんです。
豊島は豊かな水に恵まれているんです。
豊島は、人口約1000人、島の面積は14.49㎢ 集落を大きく分けると3つあり、家浦、唐櫃、甲生に分布します。唐櫃集落には、豊富な湧水が出る清水「唐櫃の清水」が島を潤し、中央にそびえる壇山には、深い森「スダジイの森」が広がり原生林が覆う。壇山の頂上から眺める眼下には、実に素晴らしい景色が広がる。世界中探してもこんなに美しい景色に囲まれた島々があっただろうかと思わせるほど! 全体が静止したかのような時間に吸い込まれていきます。

昔から酪農と稲作が盛んで棚田が広がり、内海交易と石材業を基幹産業として栄えた町。集落により石の積み重ね方が違うのも特徴的です。

しかし、この美しい島で、1975年から16年間不法投棄が行われ続け、1990年、国内最大級の産業廃棄物不法投棄事件が発覚、島の住民達は、この、「ゆたかな島」でどれだけ苦しんできたことでしょう。その苦しみは計りしれません。

その後、香川県が行政責任を認めて謝罪し、完全撤廃に向けた公害調停成立から、今年2010年6月6日で10年という節目の日を迎えました。今では、アマモが広がるようになった北海岸ですが、その近くの陸地には、未だ30万トン近くの産廃と汚染土壌があり、どこか化学臭も漂い、現在も懸命な作業で、2012年度末までの処理計画の完了を目指し、撤去処理が進んでいます。この美しい島を汚染したのも人間であり、命懸けで守るのも人間。住民が一つになり、戦ってきたからこそ、さらに心が豊かになり、そして島の美しさが源となり、活気を取り戻そうとしている島なのかもしれません。住民の終わりなき戦いは続く。そして、今ここに瀬戸内国際芸術祭という現代アートの未知なる世界との融合を経ながら。

 

家浦かいわい

高松港からフェリーで直島(本村)経由で、             
約30分。家浦港に到着。そこは別世界!

豊島行きフェリー

今回は、豊島生まれの豊島育ちのこの方!
兒島晴敏(72歳)さんに案内してもらうことにしましょう。
芸術祭期間中はボティアガイドの予定。島のお薦めは?!

兒島晴敏さん

 

テーマは『食』と『アート』の展開する豊島。
棚田が広がり、綺麗な湧き水に溢れ、ゆたかな大自然の中はぐくまれた地産地消の島。

果樹栽培も豊富で、みかん畑、いちご農園やレモン農家があり、美味しい魚も豊富に捕れます。
豊島の玄関口、家浦港から歩いて5分くらいのところに、古民家が立ち並ぶ。昨年4月に民家を改修し、豊島グッドアフタヌーンバー『bar de HITAKI』がOPEN。
 

『bar de HITAKI』です。家浦港からすぐです。
『bar de HITAKI』で食べたパエリアです。

 

スペインの香りと豊島の港の香りが混ざり合いました。

週に2回、火・木曜日の午後1時半~5時まで営業。素敵な音楽が流れています。 

この日は、豊島のアフタヌーンバーのコラボ企画で、一日限りのチリンギート(スペイン語で海の家)が開催されました。スペインのお酒CAVAを飲みながら海を眺め至福の時。最高です!

料理はすべて手作りで、スペインから取り寄せた鍋でパエリアを作り、前菜やムール貝、採れたてサザエ等も堪能。 音楽と風に揺られながら豊島時間を満喫です。

オーナーの栗生みどりさんは、瀬戸内国際芸術期間中は週2日間は、営業して他の2日間は香川大学経済学部の学生さん達が社会実験の為に営業するのだとか。
窓の向こうに広がる光景は、陽光に輝く海、漁港ならではの風景とワインがよく合います。

bar de HITAKI の数件隣にOPENするのは、『トビアス・レーベルガー』です。(あなたが愛するものはあなたを泣かせもする。)注目です!!
港の近く、空家を改装したレストランを開店。床や壁、テーブルなどには、第一次世界大戦時の船に用いられた迷彩柄をモチーフとした装飾があしらわれています。

トビアス・レーベルガー『あなたが愛するものは、あなたを泣かせもする(日本フランチャイズバージョン』」食事し語らう日常空間に「問い」を紛れ込ませたレストランです。

次に児島さんお勧めの場所の1つ!と言えば、家浦港から徒歩3分、『エフズカンパニーいちごの家』。
イチゴ農家の多田さんが経営するお店で、ランチタイム!豊島産のイチゴをふんだんに使用したアイスクリームやイチゴミルクかき氷など日替わり定食があります。
 

多田さんの手作り、いちご家の「みるくいちごかき氷」です。美味しかったです。
手作りいちごジャムです。

※豊島の再生を象徴するイチゴ栽培は、1999年に始まりました。ハウス内での養液や水管理を自動的にする「らくちんシステム」を導入し栽培面積を増やしています。今から14年前に脱サラし、東京から母親の故郷豊島に移ってイチゴ栽培を手掛ける多田初さんは、栽培面積を当初の倍以上の二十七アールに増やしました。産廃当時の風評被害はなくなりましたが“産廃の島”のイメージを払拭するため、豊島を再生させる為、イチゴを産業に、再生の象徴にしたいと意気込んでいます。「豊島産イチゴ」今後の目標を、多田さんに伺うと、管理が一番大変。最初から最後まで流通の販路を拡大し、産業化していきたいと先見の眼差しで語ってくれました。

 

唐櫃かいわい

    

次は、児島さんが運転する車に乗車し、細い路地を幾重に家と家の密集した空間へ。
着いた先は、「島キッチン」と言われる豊島の食文化あふれる異空間。まさに故郷を思い出させる懐かしい空間です。
 

島キッチンにある縁側。会期中、この舞台で演奏会やワークショップ多彩なイベントが行われます。広島県出身の建築家 安部良さんが手がける「島キッチン」は、唐櫃地区の既存の古住宅を使用し、敷地の地形や周囲の集落の景観に馴染むように気を計らい構想した。

 

レストランと併設された屋外には、演奏会やワークショップなど様々なイベントが出来る舞台があります。安部良さんに島キッチンのコンセプトを尋ねてみました。「出来るだけまわりの景観に溶け込みつつ、豊島らしさを表現したい。食とアートを通じて、豊島内の人々の繋がりはもちろん、周囲の島々や島外との繋がり、そして世界の人々との沢山の繋がりが産まれるきっかけになるような場所を作り出すことです。どこからともなく人が集まって来る大きな縁側を!」と。

屋外の屋根も杉板を使用し、風が自然に透過するような構造とした。豊島に自ら同化し製作したいという熱意が伝わってきました。

内装は周囲の風景や周囲となじみのいい木の温かみのあるデザイン仕様。厨房を取り囲むように、カウンターが設けられています。椅子は周辺の学校から再利用した物。厨房では、豊島の人々(児島さんの奥様も協力とのこと)こえび隊も参加して、丸の内ホテルの総料理長山口仁八郎さんが独創的なメニューを開発し、総結束の下でのはつらつとした皆さんの笑顔が印象的でした。

総料理長山口仁八郎さん曰く、「約1年前くらいから、芸術祭でも何かお手伝いすることはないか。と思案していた中で、豊島で採れた食材を使用し、地産地消を取り入れたキッチンをと。当初は地元住民の方々と溶け込むことが容易ではなかったが、同じ時間を共有することにより溶け込み、またより素敵な島の風土と混ざり合いながら食事をする場所を提供することに至った。皆さんの結束力によりここまでこれたという感謝の気持ちでいっぱいです」と言われました。

レストラン営業10時から17時まで。会期中様々なイベントも開催予定です。是非、島の美味しさまるごと! ごらんあれ!!
 

島キッチンのイメージ図

 

心に響く島の旅へのご案内、第1回目となりました。豊島だけで現代アート23作品、体験場所は多く在ります。島の文化や風と溶け合い、海の豊かさと島時間の贅沢さを味わいに来てください。便利さに慣れてしまった私達、いろんな感謝の気持ちを再び再確認できる旅なのかもしれない。次回も引き続き豊島からお届けします!! お楽しみに!

豊島の食文化あふれる異空間『島キッチン』

 

 

瀬戸内国際芸術祭2010公式ガイドブック

この1冊にはすべてが集約されていますから、これを購入すると完璧です。
島ごとに説明されており、地図上に番号がつけられていて作品位置が分かりやすい。アクセス方法やフェリー時間帯もすべて網羅できます。
http://www.archipelago.or.jp/store/
products/details/286

 
瀬戸内アートナビ

こちらから検索すると、芸術祭の詳細情報が分かる! アクセス方法からトイレ場所、当日の混雑情報まで情報満載です。
http://www.setouchi-navi.jp/

 
 
瀬戸内国際芸術祭

開催期間:2010年7月19日 (月)~10月31日(日)
開催場所:瀬戸内海の7つの島/直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松
案内:瀬戸内国際芸術祭 総合インフォメーションセンター Tel.087-813-2244
交通アクセス:
http://setouchi-artfest.jp/accsess

 

曽根海上タクシー
http://www.pref.kagawa.jp/kanko/seto-island/welcome/taxi.pdf
(0879-68-2072香川県公式サイトの情報です)

 
エフズカンパニーいちご家
http://www.teshima-web.jp/news/post-80/

 
bar de HITAKI
http://blog.livedoor.jp/mayanaika/

 
瀬戸内国際芸術祭 島キッチン
http://shimakitchen.com/calendar/